ゲリマンダリングで「消える票」がまた1つ公認された——米連邦最高裁が、アラバマ州の共和党寄り議会選挙区地図を今秋の選挙でそのまま使うことを認めた。黒人有権者の投票権を希薄化するとして公民権団体が訴え続けてきた地図が、法廷の最終審で生き残ったかたちだ。
黒人人口27%、なぜ7議席中1席しか取れないのか
アラバマ州の人口に占める黒人の割合は約27%。単純計算なら7議席のうち少なくとも2席に黒人代表が出やすい選挙区があってもおかしくない。ところが現行の地図では、黒人票が集中する選挙区は1つに絞られ、残り6区では黒人有権者が分散して埋もれる設計になっている。
これがゲリマンダリングの古典的な手口で、「パッキング(票を一か所に詰め込む)」と「クラッキング(票を細切れに分散させる)」を組み合わせると、数十万票規模の民意が結果に反映されなくなる。今回の最高裁判断は、その構図を今秋の選挙限定で容認したことになる。
「最高裁、アラバマ州に対しGOP寄りの議会選挙区地図を今秋の選挙で使用することを承認した」(Just The News)
投票権法(Voting Rights Act)第2条は、人種的少数派の投票権を希薄化する選挙区割りを禁じている。公民権団体はまさにこの条項を根拠に争ってきたが、最高裁は現行地図を差し止めるほどの緊急性は認めなかったようだ。「認めなかった」というより、少なくとも今秋の選挙については「現状維持が適切」と判断したと見るのが正確だろう。
この判断が「先例」になるとどう変わるか
厄介なのは、最高裁の決定が単なる一時的な裁定を超えて、2026年以降の選挙区再編論議に引用される可能性があるところだ。各州の共和党系州議会が「最高裁が認めた前例がある」と主張すれば、似たような地図を描くハードルが下がりかねない。
アラバマ州だけの話ではなく、フロリダ、テキサス、ジョージアといった黒人人口比の高い南部州でも、類似の選挙区訴訟が複数進行中だったりする。今回の判断がそれらの審理にどう影響するかは、弁護士たちが今ごろ猛烈に分析しているはずだ。
この先どうなる
今秋の選挙は現行地図で実施される見通しが高まった。ただし、選挙後に地図の合憲性を問う訴訟が続く可能性は十分あって、2025年以降に下級裁判所が改めて審理を行うシナリオも排除できない。公民権団体側は「今秋は負けたが、2026年の中間選挙には間に合わせる」という長期戦を視野に入れているとみられる。最高裁が保守優位の現状を維持する中、投票権法そのものの解釈が問い直される局面がいずれ来るんじゃないか——そんな見方が法律家の間で静かに広がりつつある。