プライベートクレジット市場に、世界最大級のプレーヤーたちが「待った」をかけた。ブラックロックら信用市場の巨人が警告を発したのは、「意味をなさないディール」が横行しているという、かなり直球な指摘だ。
ブラックロックが名指しした「意味をなさないディール」とは何か
プライベートクレジットとは、銀行を介さず機関投資家や運用会社が企業に直接融資する市場のこと。低金利時代に「銀行融資より高いリターンが取れる」として急膨張し、今や数兆ドル規模に達している。年金基金や保険会社も大量に資金を投じてきた。
問題は、資金が集まりすぎたことで競争が激化し、融資先の審査が甘くなっていったらしい点だ。リターンを求めるあまり、通常なら通らないような案件にも資金が流れ込んでいる。
「クレジット市場の巨人たちは『意味をなさないディール』における淘汰を警告しており、プライベートクレジット市場における引受基準の悪化への懸念が高まっていることを示している。」(Bloomberg)
引受基準の悪化というのは、要するに「貸してはいけない相手に貸している案件が増えている」ということ。これが積み上がれば、どこかで焦げ付きが連鎖する。
2008年と「同じDNA」——規模より怖いのは形骸化した審査
サブプライム危機と構造が違うのは確かだった。あのときは証券化商品を通じて問題が連鎖したが、今回はそこまでの複雑な連鎖経路はない。ただ、「量を追うあまり質が劣化する」という流れは、当時とかなり重なって見える。
市場関係者が特に気にしているのは、プライベートクレジットの非流動性だ。株式と違って、市場価格がリアルタイムで出るわけじゃない。問題が表面化するのが遅れやすく、気づいたときには傷が深くなっているケースがある。機関投資家が損失を抱えても、すぐには売れない。それが怖い点じゃないかと、複数の専門家が指摘している。
ブラックロック警告の文脈でもう一つ見落とせないのが、淘汰という言葉の重さ。業界のトッププレーヤーが自ら「整理が来る」と言い始めたということは、水面下では相当な問題意識があるとみていい。
この先どうなる
市場の自浄作用に期待する声もある。審査の甘いプレーヤーが淘汰されれば、残った運用会社は信頼性を取り戻せる、という見立てだ。実際、質を重視してきたプレーヤーには今が差別化のチャンスでもある。
一方で、金利が高止まりしている今、借り手側の返済負担は増している。問題案件が顕在化するタイミングが早まる可能性は十分あるといった見方も出ている。年金基金など長期投資家への波及がどこまで広がるか、今後の焦げ付き動向が最大の焦点になりそうだ。プライベートクレジットへの資金流入が続く限り、この問題は静かに積み上がり続ける。