Abelardo de la Espriellの名が、トランプのTruth Socialに突然登場した。外国の選挙候補者をアメリカの元大統領が実名で祝福するのは、ほとんど前例がない話らしい。しかも相手はコロンビア。南米第3位の経済規模を持ち、米国との間には麻薬対策・移民・安保と、面倒ごとがひとつもかぶらない関係でもない国だ。

「エル・ティグレ」とは何者か。ペトロとの落差が鮮明

デ・ラ・エスプリエルは「エル・ティグレ(虎)」の通称で知られる右派系の政治家。現職のグスタボ・ペトロ大統領は元ゲリラ出身の左派で、就任以来ワシントンとの摩擦を重ねてきた経緯がある。麻薬密輸業者の米国引き渡しを渋り、ベネズエラのマドゥロ政権とも距離を縮めてきた人物だ。トランプ政権にとってペトロは相性最悪。そこに右派のエル・ティグレが出てきたとなれば、支持を打ち出す動機は読みやすい。

コロンビア大統領選に向け、アベラルド・デ・ラ・エスプリエルへの注目度は国外でも急上昇している。ただ現段階では世論調査での位置づけも流動的で、トランプの一投稿が票を動かすかどうかは別の話になってくる。

コロンビア大統領候補「エル・ティグレ(虎)」、アベラルド・デ・ラ・エスプリエルに祝意を表する――Donald J. Trump(Truth Social)

投稿それ自体は祝意の表明にとどまり、政策の保証でも外交的な約束でもない。とはいえ米国元大統領の言葉は、コロンビア国内での「親米か反米か」という文脈に乗っかりやすく、選挙戦の空気を動かす可能性はある。

トランプが中南米の選挙に顔を出すパターン、これで何度目か

思い返すと、トランプは第1期政権のころからベネズエラのフアン・グアイドー暫定政権を承認し、ニカラグアやキューバへの強硬路線を鮮明にしてきた。中南米の右派系候補を「民主主義の守護者」として持ち上げ、左派政権を孤立させる手法は、トランプ流の外交のひとつのパターンと言っていい。今回のエスプリエル支持も、その延長線上にあると見ると腑に落ちる。

一方でコロンビアは米国にとって対麻薬作戦の最前線でもある。ペトロ政権下で滞っていた協力関係が、もし右派政権に代われば巻き直せる、という計算が働いているとしてもおかしくない。あくまで個人SNSの発信だが、メッセージの受け取り方は現地の有権者次第といったところ。

この先どうなる

コロンビア大統領選の行方とトランプの中南米外交は、当面セットで見ておく必要がある。エスプリエルが選挙を勝ち上がればワシントンとボゴタの関係は急速に修復に向かうだろうし、逆に左派系候補が残れば摩擦は長引く。トランプにとっては「南米の反米ドミノを止める」という大きな図面がある。今回の一投稿がそのどこに位置するのか、次の世論調査の数字が出たとき、もう少しはっきりしてくるんじゃないか。