米イラン軍事衝突が、一夜にして「報復の連鎖」へ転じた。米軍がイラン本土の軍事施設を直接爆撃した直後、テヘランはクウェートに駐留する米兵へ向けて弾道ミサイルを発射。そのミサイルはクウェート上空で迎撃された——APが報じたのは、近代史上ほとんど前例のない米イラン間の直接交戦だった。

クウェート上空で何が起きたか——弾道ミサイル迎撃の意味

注目したいのは「弾道ミサイル」という選択肢だ。巡航ミサイルや無人機ではなく、弾道弾を使ったということは、IRGCが意図的にエスカレーションのラダーを上った可能性がある。クウェートは湾岸協力会議(GCC)の加盟国であり、米軍の主要拠点が置かれている。ここを標的にしたのは「米軍基地ならどこでも届く」というメッセージの発信とも読めるし、あえて迎撃させることで双方が「一線は越えていない」という言い訳を確保したとも見られる。

「米国はイランの軍事施設を爆撃し、その後テヘランがクウェートに駐留する米軍に向けて発射したミサイルを撃墜した。両国間の衝突における劇的なエスカレーションである。」——The Associated Press

迎撃に成功した事実は米軍の防衛能力を示す一方、イランが「次は外す気がない」弾頭を準備していた場合、話はまったく違う局面になっていた。ここが引っかかるところだった。

ホルムズ封鎖シナリオ——世界原油20%が止まる条件

軍事的な応酬と並行して、市場がもっとも恐れているのはホルムズ海峡の機能停止だろう。世界の原油供給のおよそ20%がこの幅17マイルの海峡を通過している。イランは過去にも「海峡封鎖」を示唆してきたが、今回のように米軍が本土を直接攻撃した後という文脈は過去とは重みが違う。

エネルギー市場への波及は段階的に現れるとみられており、まず先物価格が急騰し、次いで保険料の上乗せで実勢価格が上がる。そのラグが「株式市場は動いたのに給油価格は変わらない」という数日間の静けさを生むことがある。調べてみると、2019年のサウジアラビア石油施設攻撃の際、原油価格は一時14%急騰したものの3日で元に戻った経緯があった。今回がそのパターンをなぞるかどうかは、IRGC次第といったところか。

また、日本にとって中東からの原油依存度は約90%に上る。有事の備蓄は国家備蓄と民間備蓄合わせて約240日分とされているが、供給途絶が長期化すれば話は別になってくる。

この先どうなる

焦点は「イランが次の一手をどう打つか」に移りつつある。IRGCが報復として選べる選択肢は幅広く、ホルムズ封鎖、湾岸各国への代理勢力攻撃、あるいはイスラエルへの脅し——どの方向へ踏み出すかで中東の地図は大きく塗り替わる。米国側も国内の政治的文脈を抱えており、「攻撃は成功した、これ以上は戦争だ」と幕引きに動くシナリオと、さらなる施設攻撃に踏み込むシナリオが並存している。外交ルートはほぼ機能していない状態で、第三国(カタールやオマーン)の仲介が再浮上するかどうかがひとつのカギ。当面は48〜72時間以内のIRGCの声明と、米軍の即応態勢の変化を見ておくのが先決だろう。