FHFA長官任命を自ら宣言したトランプ大統領が、ファニーメイとフレディマックの新会長も同時に指名した——この人事が静かに、数兆ドル規模の住宅ローン市場を揺さぶり始めている。

米住宅ローンの70%を握る2社に、トランプが直接手を入れた

ファニーメイ(連邦住宅抵当公社)とフレディマック(連邦住宅貸付抵当公社)は、米国の住宅ローン市場のおよそ70%を支える政府支援企業(GSE)。銀行が貸し出した住宅ローンを買い取り、証券化して投資家に売る——この仕組みが止まれば、アメリカの住宅購入者はローンを組むこと自体が難しくなる。

両社は2008年の金融危機でほぼ破綻状態に陥り、連邦政府の管理(コンサーバトーシップ)下に置かれてきた。以来16年以上、民営化は「検討中」のまま先送りされてきたが、トランプ政権はその流れを変えようとしている。

「私は連邦住宅金融庁(FHFA)長官、およびファニーメイ・フレディマック会長を任命する」——Donald J. Trump(TruthSocial)

投稿はシンプルだったが、市場関係者の読み方は一様に「民営化への地ならし」。FHFAはこの二社を監督する立場であり、長官の顔ぶれが変われば規制の方向性も変わる。

民営化が進めば「恩恵」か「リスク再燃」か、住宅購入者が直撃される

トランプ政権が民営化を急ぐ理由のひとつは財政論。政府の保証なしに自立させれば、連邦政府の潜在的な損失リスクを切り離せるという考え方らしい。一方で、政府の後ろ盾がなくなれば、ファニーメイとフレディマックが資金調達に払うコストは上がる。そのコストは最終的に住宅ローン金利に転嫁されるのが市場の論理だ。

現状でも30年固定住宅ローン金利は7%前後で高止まりしており、住宅購入者の負担はすでに重い。ここに民営化リスクが重なると、金利がさらに押し上げられるシナリオも否定できない。

フレディマック住宅ローン市場の流動性を維持してきた両社が、民間企業として株主利益を優先し始めたとき、低・中所得層向けの融資が絞られる可能性も指摘されている。2008年の教訓がそこにある、といえばある。

この先どうなる

今回の人事の「速度」が焦点になる。新長官・新会長が就任後、コンサーバトーシップ解除に向けた具体的なロードマップを示すかどうか——それが最初の試金石になりそうだ。議会の承認が必要な部分もあり、民主党側は「2008年の再現を招く」と早速牽制している。完全な民営化には数年単位の時間がかかるとの見方が多いが、トランプ政権の「やると決めたら速い」という前例もある。ファニーメイ民営化の行方は、アメリカの住宅購入者だけでなく、世界中の住宅ローン担保証券(MBS)投資家にとっても無視できない話になってきた。