USMCA再交渉の期限まで残り2カ月を切った今、カナダ側がついに動いた。対米貿易相ドミニク・ル・ブランクが火曜日にワシントン入りし、米通商代表ジェイミーソン・グリアと会談。USMCAを「さらに16年延長する」よう正式に要請した。ただ、三つの火種はまだくすぶったままだ。

ル・ブランクが突きつけた「16年延長」要請の重さ

ル・ブランクが提出した更新通知には、USMCAが三カ国すべてにとって「非常に有益」との文言が盛り込まれた。北米自由貿易協定USMCAは、米・加・墨の貿易総額1兆3000億ドル超を支える根幹であり、延長の可否は単なる外交問題を超えたサプライチェーン全体の話になる。

一方、グリアはすでにメキシコとの協議を終局段階に進めている。カナダとの交渉が大幅に遅れているのは、双方の溝が想像以上に深いからだろう。

「カナダの対米貿易相ドミニク・ル・ブランクは火曜日の更新通知において、USMCAをさらに16年延長するよう要請し、この協定は三カ国すべてにとって『非常に有益』であると述べた。」(BBC News)

鉄鋼・乳製品・酒類ボイコット、三つの壁をどう崩すか

交渉の障壁になっているのは、大きく三点。まず鉄鋼・アルミ・自動車への分野別関税。首相マーク・カーニーはこれらの撤廃または引き下げを公言しているが、グリア側は「何らかの形での関税受け入れ」をカナダに迫っている。ここだけでも相当な隔たりだ。

次に乳製品市場の開放。カナダは生産クォータと輸入管理で国内酪農家を保護しており、米国側はこの門を開けるよう求めている。農村票を抱えるカナダ側が簡単に折れる話ではない。

そして三つ目が、カナダの各州が断行した米国産酒類のボイコット。トランプ政権の関税措置への対抗措置として棚から引き揚げたわけだが、これが米側の「貿易刺激要因リスト」に明記されている。カーニーは「関税問題が解決すれば酒類ボイコットの解除もある」と示唆しているので、ここは連動して動く可能性がある。

この先どうなる

7月の再交渉期限は動かない。メキシコが先に着地点を固めた構図は、カナダに「取り残される」プレッシャーをかけているはずで、今回の正式要請もその焦りと無縁ではないんじゃないか。グリア側がどこまで関税を譲れるか、カーニー政権が国内農業票を抱えながら乳製品をどこまで開放できるか。この二点が収束しなければ、7月に間に合うかどうかは正直怪しい。ドミニク・ル・ブランクのワシントン滞在中に何らかの地ならしができるかどうか、次の動きが最初の分岐点になる。