ハブダンパイプラインが、原油だけでなくガソリンやジェット燃料まで運ぶ——UAEがそんな計画の検討に入ったと、Bloombergが報じた。世界の石油輸送量の約20%が通過するホルムズ海峡を完全にスキップするルートを、精製済み燃料にまで広げようとしている。

ハブダンパイプライン、そもそも何ができて何が足りなかったのか

アブダビからオマーン湾のフジャイラまで延びる全長約400kmのハブダンパイプラインは、2012年に稼働を開始した。設計上の目的は明快で、ホルムズ海峡を経由せずに原油を直接輸出することだった。処理能力は日量150万バレル超とされ、UAEの原油輸出の相当部分をカバーできる規模がある。

ただし、これまでの対象は「原油」に限られていた。ガソリンやジェット燃料、ディーゼルといった精製済み製品は別の話で、それらはホルムズ経由の輸送に依存したまま。今回の検討はその空白を埋めようとするものらしい。

「アラブ首長国連邦は、ホルムズ海峡を迂回するパイプラインを精製燃料も輸送できるよう拡張することを検討している。同国は同海峡での潜在的な混乱に対する脆弱性の低減を図っている。」(Bloomberg報道より)

ここが引っかかった点でもある。原油の迂回ルートを持っているのに、精製品は手当てできていなかった。有事の際、ガソリンが止まれば空港も工場も動かなくなる。原油よりも精製品の方が社会インフラへの直撃度は高いとも言える。

イランとの緊張が「2回目以降」も想定させた

今回の検討が加速した背景には、繰り返し繰り返し市場を揺さぶってきたイランとの地政学的リスクがある。2019年のタンカー攻撃事件、ここ数年のホルムズ封鎖をちらつかせる発言——実際に閉鎖されたことはないが、「閉鎖されたら」のシナリオを一度でも具体的に試算した人間は、次にもっと手を打とうとするはずだ。

ホルムズ海峡迂回ルートの整備は、単なる保険というより、UAEが「もう次はない」と腹を決めた宣言に近い。フジャイラ港はすでにアジア向けの石油ハブとして機能しており、そこに精製品のパイプラインが加われば、湾岸エネルギーの物流地図はかなり書き換わる。

この先どうなる

計画が実現するには、精製品に対応した新たなパイプライン設備の建設や、フジャイラ側のターミナル拡張が必要になる。投資規模・工期ともにまだ明らかになっておらず、Bloombergも「検討段階」と報じるにとどまる。ただ、UAE政府がこのタイミングで情報を出してきたのは意味深で、資金調達や国際パートナーへの打診が既に始まっている可能性がある。アジア各国のエネルギー調達担当者は、フジャイラ経由の新しいサプライチェーンを前提にした計画の見直しを、そろそろ始める必要がありそうだ。