ホルムズ海峡封鎖が始まってわずか数日、米軍はついか民間船に向けて引き金を引いた。米中央軍(Centcom)が公式声明で明らかにしたのは、イランへ向かうボツワナ船籍のタンカー「M/T」号のエンジン室に、米軍機がヘルファイアミサイルを発射したという事実だ。船は無力化され、現場映像まで公開された。「警告を繰り返し無視した」というのが発射の理由らしい。

ヘルファイア1発で止まったタンカー、次は満載船か

米軍がホルムズ海峡の封鎖を開始したのは4月13日。世界の原油輸送量の約20%が通過するこの海峡で、実際に民間船籍を標的にした実力行使が起きたのは今回が初めてとなる。

「乗組員が繰り返しの警告を無視したため、米軍機はボツワナ船籍タンカーのエンジン室にヘルファイアミサイルを発射し、船舶を無力化した」(米中央軍・Centcom公式声明)

今回のタンカーは空荷だったとされる。だからこそ原油価格への直接的な波及はひとまず限定的だったわけだが、ここが引っかかる。次に標的になるのが原油を満載した船だったら、話は全然変わってくる。スポット価格の乱高下はもちろん、保険会社がホルムズ経由の航路に戦争リスク割増料金を積み増せば、物流コスト全体が跳ね上がる。

イランの「沈黙」が読めない理由

気になったのはイラン側の反応だった。Centcomの声明発表後、イランは公式コメントを出していない。報復声明を出すでも、強硬な反論を繰り出すでもなく、ただ静かにしている。これを「余裕」と読むか「手詰まり」と読むかで、今後の展開への見立てが180度変わってくる。

BBCのボーウェン国際編集長は「トランプ政権は世論圧力や湾岸諸国の要請から早期決着を求めているが、イランは譲歩なき交渉を求めている」と指摘していた。つまり双方の要求がかみ合っていない状況で、ホルムズ海峡という世界の「石油の蛇口」が戦場になりつつある。

この先どうなる

米軍が映像を公開したのは偶然じゃないだろう。「やれる」という意思を世界に見せるためのシグナルだった可能性が高い。問題は、このシグナルをイランがどう解釈するかだ。次の一手として考えられるのは、イランによるホルムズ海峡の自国封鎖宣言、あるいは代理勢力を使った迂回攻撃。原油市場は今のところ小康状態だが、満載タンカーへの攻撃や海峡の完全封鎖が現実になれば、エネルギー価格の急騰は避けられない。封鎖が長引くほど、沈黙を続けるイランの次の手が重くなっていく。