ロシア原油輸出が、ウクライナのドローン攻撃を受けながら逆に膨らんでいる。Bloombergが報じたデータによれば、5月31日までの4週間でロシアが輸出した原油は日量364万バレルに達し、2022年の侵攻開始以来、年間平均をどの年も上回る水準となった。攻撃が増えるほど輸出が増える、という話がどうも現実になりつつある。
364万バレルの謎——精製所を壊すと原油が余る
ウクライナ軍のドローンは2024年以降、ロシア国内の石油精製施設を繰り返し標的にしてきた。サラトフ、リャザン、ノヴォシャフチンスクなど、各地の製油所が損傷を受けたと伝えられている。
ところが、ここに見落とされやすい逆算がある。精製所が動かなければ、採掘した原油を国内でガソリンや軽油に加工できなくなる。行き場を失った原油は、輸出するしかない。結果として、ドローン攻撃が精製能力を削るほど、輸出に回る原油が増えるという連鎖が生まれた。
Russia shipped 3.64 million barrels a day of crude oil in the four weeks to May 31, boosting Moscow's petroleum revenues.(Bloombergより)
皮肉というより、構造的な落とし穴だと思う。攻撃の設計が「精製所を潰す=収入を減らす」という前提で組まれていたとすれば、その前提自体が崩れていたことになる。
シャドーフリートが制裁の網をすり抜ける現実
もう一つ見ておきたいのが、シャドーフリートの存在。欧米の制裁に対抗するため、ロシアは船籍や保険を曖昧にした「幽霊船団」を使って原油を迂回輸出してきた。インド、中国、トルコなどが主な仕向け地で、割安価格を武器にG7の価格上限措置も事実上機能していないとされる。
シャドーフリートの規模は制裁強化後も縮小していないらしく、欧米の取り締まりが追いつけていない。摘発しようとしても、船の所有権が複数の幽霊会社に分散されていて、どこを訴追すればいいかすら不明瞭な状況が続いている。
日量364万バレルという数字の裏には、こうした迂回ルートが今も太く通っている現実があった。
この先どうなる
ウクライナのドローン攻撃戦略が精製施設から、より上流のパイプラインや積出港へシフトするかどうかが一つの分岐点になりそうだ。積出インフラを直接狙えば、輸出量への打撃はより直接的になる。一方でロシアは代替輸出ルートの多様化を進めており、北極海航路や東回りルートの拡充も視野に入れているとされる。
欧米の制裁側でいえば、シャドーフリートへの実効的な締め付けが焦点。船舶追跡技術の活用や、港湾国による入港拒否の強化が議論されているが、実行力を伴う合意にはまだ距離がある。ロシアの戦費調達能力が削られるまでには、もう少し時間がかかりそうだ。