PDVSAが外資系石油企業に突きつけた要求は、「電力は自分で用意しろ」だった。Bloombergが2026年6月2日に報じたところによると、ベネズエラ国営石油会社PDVSAは現地で操業する外資系企業に対し、各プロジェクト向けの電力を自前で調達するよう求めはじめている。理由を聞けばシンプルで、国家電力網がもう当てにならないからだ。

年間数百回の停電——シェブロンが直面するベネズエラの現実

ベネズエラ国内では大規模停電が年間数百回にのぼるペースで発生している。電力インフラの老朽化と投資不足が重なった結果で、2019年には首都カラカスを含む全土が数日間にわたって暗闇に沈んだことも記憶に新しい。油田操業は24時間止められないプロセスだから、電力が突然落ちれば生産そのものが崩れる。PDVSAとしては国家電力網の再建を待っている余裕がなく、コストとリスクをパートナー企業に転嫁する形を選んだとみられる。

「頻発する停電を受け、ベネズエラは石油会社に対し油田向けの自家発電を義務付けた」(Bloomberg、2026年6月2日)

シェブロンやイタリアのエニなど、現地合弁事業に関与する企業にとってこれは痛い話だ。発電設備の導入・維持コストがそのまま採算に乗ってくる。しかも南米石油投資の文脈で言えば、ベネズエラはすでに「高リスク・低リターン」の代名詞に近い。追加コストを呑んでまで操業を続けるかどうか、各社が頭を抱える局面になってきた。

日量300万→40万バレル、数字が語る崩壊の深さ

かつてベネズエラは日量300万バレルを誇る産油大国だった。それが今や40万バレル台。ピーク時の7分の1以下にまで落ち込んでいる。制裁・腐敗・技術者の国外流出・設備の老朽化——崩壊の要因は複合的で、電力問題はそのひとつに過ぎない。ただ、電力が安定しない限り増産シナリオは絵に描いた餅で終わる。自家発電の義務化は応急処置としては理解できるが、問題の根を断つものではない。外資が設備投資をためらえば、生産量の底打ちすら見通せなくなってくる。

この先どうなる

シェブロンは米国の制裁緩和を受けて操業を続けている数少ない外資のひとつで、撤退よりも条件交渉に動く可能性が高い。ただ自家発電コストの分担割合や費用回収の仕組みが明確にならなければ、新規投資には踏み込めないだろう。エニなど欧州勢も同様の判断を迫られる。ベネズエラ停電の問題が解消される見通しは現状ほぼなく、このまま外資のコスト負担が続けば、撤退・縮小の判断が相次ぐリスクもある。PDVSAにとって、今が油田存続の瀬戸際であることは数字が示している。