ネタニヤフ首相がヒズボラへの継戦を宣言したのは、レバノンとイスラエルの当局者がワシントンの会議室に着席していた、まさにそのタイミングだった。外交テーブルと戦場が文字どおり同時に動いていたわけで、これを偶然と見る専門家はほとんどいない。

ワシントン会談中もレバノン空爆が止まらなかった理由

歴史を振り返ると、交渉と軍事行動を並行させる戦略は珍しくない。ベトナム和平交渉の裏でB-52が飛び続けたケースが典型で、多くの場合「戦場での優位を固めてから条件を提示する」という論理で動いている。今回のイスラエル レバノン 空爆 外交の構図も、同じ系譜に見える。

レバノン経済はすでに崩壊寸前と言われており、ヒズボラの軍事インフラが削られ続ければ、停戦条件の交渉力は自然とイスラエル側に傾く。ネタニヤフ政権にとって、この「時間」こそが最大の交渉カードになっているんじゃないかという見方が出ている。

「イスラエルのネタニヤフ首相は、レバノンとイスラエルの当局者がワシントンで会談する中においても、ヒズボラに対する作戦を継続すると誓約した。」(The New York Times)

調べてみると、今回のワシントン会談はアメリカが主導する中東停戦ロードマップの一環として位置づけられていたらしい。ガザ停戦の延長線上にレバノンを組み込もうという青写真で、ホワイトハウスとしては一定の前進を期待していた形だ。

アメリカの停戦ロードマップに「計算外」が入り込んだ

レバノン和平交渉 ワシントンという舞台を設定したのがアメリカ自身だっただけに、イスラエルの空爆継続は立場を複雑にする。表向きは「交渉を支持する」と言いながら、同盟国の軍事行動を止められない構図が再び露わになった格好だ。

ここで引っかかるのは、ネタニヤフ政権の国内事情。司法改革をめぐる政治的圧力と、右派連立政権の維持という内政上の制約が、外交的柔軟性を著しく狭めているという分析が各紙に出ている。停戦に踏み切れば連立が崩れかねない、という構造的な縛りがある。

一方のヒズボラは、今年に入って幹部の相次ぐ暗殺と武器補給路の遮断で弱体化が進んでいるとされる。ただ、ロケット砲の在庫は依然として相当数が残っているという報告もあり、完全な無力化には至っていない状況だ。

この先どうなる

ワシントン会談が具体的な停戦合意につながるかどうかは、まだ見えない。イスラエル側が求める「ヒズボラの国境地帯からの完全撤退」という条件を、レバノン側が受け入れるハードルは依然として高い。アメリカが仲介圧力をどこまで強められるかが当面の焦点になりそうだ。交渉しながら空爆を続けるという戦略が奏功するとすれば、それはヒズボラの継戦能力が臨界点に達したときだろう。ただ、そのタイミングを見極めるのは、外から見ている限り相当難しい。