スティーブ・ヒルトンの名前がトランプのTruth Socialに突然現れたのは、カリフォルニア知事選の投票日当日だった。英国出身の元FOXキャスターを、世界第5位の経済規模を持つ州のトップに押し込もうとする——その一投稿が持つ意味は、単純な選挙応援とは少し違う気がした。
トランプが投稿した「一文」の重さ
問題の投稿はシンプルだった。
「カリフォルニア州知事選で今日スティーブ・ヒルトンに投票せよ。彼は私と連邦政府とともに働くだろう。」
後半の一節——「私と連邦政府とともに働く」——が引っかかった。これは候補者の政策や実績を語る言葉じゃない。連邦政府との協調を最大の売り文句にしている。裏を返せば、現在の民主党カリフォルニア州政府が連邦と対立関係にあることを前提にした言い方だ。
実際、カリフォルニアと連邦政府の対立史は長い。移民の強制送還をめぐるサンクチュアリシティ政策、連邦基準を超える独自の排ガス規制、ホームレス対策での予算配分争い。この州はずっと「連邦に従わない州」の象徴的存在だった。
ヒルトンは「英国人知事」になれるか——経歴と勝算
スティーブ・ヒルトンはロンドン出身。デービッド・キャメロン元英首相の政策顧問を務めた後に渡米し、FOXニュースの番組「The Next Revolution」でトランプ支持層の間で知名度を上げた人物だ。政治家としての実績はほぼゼロ。そのキャリアが「強み」になるか「弱点」になるかは、有権者がどちらの文脈で読むかにかかっている。
カリフォルニアは登録有権者の半数近くが民主党寄りで、共和党が知事選を制したのは2003年のシュワルツェネッガー当選が最後だった。ヒルトンが勝つ道は、無党派層の取り込みと民主党支持者の不満票をかき集める以外にないのが現実だ。トランプの支持表明が共和党コアには追い風でも、中間層への浸透という点では逆効果になりうる読みもある。
カリフォルニア知事選というのは、共和党にとって長年の「難攻不落の城」で、トランプが今回それに直接手を伸ばした背景には、2026年中間選挙を見据えた布石という見方もできる。
この先どうなる
投票日当日の支持表明という異例のタイミングから見ても、トランプはこの選挙を「勝てる戦い」より「争点化するための戦い」として使っている可能性がある。ヒルトンが仮に敗れたとしても、「カリフォルニアは連邦に協力しない州」という構図を全国に印象づける効果は残る。次の一手は予算凍結や移民執行をめぐる連邦対州の法廷闘争に飛び火しそうで、カリフォルニアを舞台にしたトランプ政権との綱引きはむしろこれから本番を迎えるんじゃないか。