コロンビア違法金の制裁リスト追加を米国に求めていたその同じ時期、ホワイトハウスの向こう側では米政府がそのカルテル産の金を買っていた——ニューヨーク・タイムズが報じた話が、あまりにも皮肉すぎる。

コロンビアからジャングルを抜け、米国の金庫へ

コロンビアのジャングル奥地で採掘された違法金は、精錬・洗浄を経てグローバル市場に紛れ込む。産地証明は偽造され、正規の取引所を経由することで「クリーン」な金に変わっていく。その流れの最終地点の一つに、よりによって米国政府が座っていたらしい。

コロンビア国防大臣がワシントンへ制裁要請を送ったのは、カルテルによる違法採掘を断ち切るための外交的圧力のはずだった。ところが同時並行で、制裁を発動すべき側の米国が当の違法金の買い手になっていたとなれば、要請の文書がどこかで交差していたことになる。

「コロンビア国防大臣による制裁要請は、違法金のサプライチェーン両端における失敗を示している」——ニューヨーク・タイムズ

「両端における失敗」という表現が刺さる。供給側(カルテルの採掘)だけでなく、需要側(米国の購入)もまた失敗だったという見立てで、麻薬カルテル制裁の議論を一気に複雑にした。

金 サプライチェーンの透明性、どこに穴があるのか

金は原油や穀物と違い、産地を追跡するインフラが極めて脆弱だ。精錬されてしまえば、コンゴ産だろうがコロンビアのジャングル産だろうが、化学的に区別がつかない。「紛争鉱物」規制が金に甘い理由の一つもそこにある。

合法的な精錬所や取引所が書類だけ整えれば通ってしまう仕組みは、麻薬カルテルにとってむしろ好都合。コロンビアではELNやゲリラ系勢力が違法採掘を収益源の一つにしており、コカインに続く「第二の現金」とも呼ばれてきた。今回の報道は、その流れが米国の調達ルートにまで届いていた可能性を示唆している。

金 サプライチェーンの透明性を高めるための国際的な枠組みはOECDのデュー・ディリジェンス・ガイダンスなどがあるが、義務付けではなく任意適用。抜け穴は構造的に残ったままで、今回のケースはその典型例と言えそうだ。

この先どうなる

米政府が実際にどのルートで違法金を購入していたのか、調達の意思決定にどの機関が関与していたのか——そこが明らかになるかどうかが次の焦点になる。議会での公聴会要求や、財務省・国務省への情報公開請求が出てくる可能性は十分あるだろう。

コロンビア側にとっても、この報道は交渉カードになりうる。制裁を「お願いする立場」から、米国の調達責任を問う側に転じる余地が生まれたとも読める。麻薬カルテル制裁をめぐる米コロンビア間の協議が、今後どう展開するか——金の流れを追うことが、そのまま外交の行方を読む手がかりになりそうだ。