ケニア エボラ隔離施設をめぐる反発が、死者2人を出す騒乱にまで発展した。2025年5月26日、中部ナニュキで数百人規模のデモ隊が道路を封鎖してタイヤを燃やし、警察が催涙ガスで鎮圧を図るなか、銃撃を受けた男性2人が命を落とした。感染者ゼロの国で、なぜここまで火がついたのか。

ライキピア空軍基地、50床の施設が火種になるまで

問題の施設は、ライキピア空軍基地に設置が計画されている50床規模のエボラ隔離・治療センター。コンゴ民主共和国で続くエボラ流行で感染した米国市民を対象に、米軍医療スタッフが治療にあたる想定だった。

ケニア国内のエボラ感染者はゼロ。それでも住民の怒りが爆発したのは、「なぜ外国の患者を自分たちの町に持ち込むのか」という素朴な疑問と、情報不足が重なったからじゃないかと思う。ナニュキ抗議デモは当初、平和的な行進として始まったとされているが、ライキピア空軍基地付近で状況が一変した。

「ケニア中部の町ナニュキで、近隣の軍事基地に米国がエボラ隔離センターを設置する計画への抗議デモの最中、2人が銃撃されて死亡した」(BBC News)

1人目の犠牲者は基地付近で撃たれ、友人に連れられて病院へ搬送されたが息を引き取った。もう1人は兵士によって運ばれてきた時点ですでに死亡していたという。銃撃の詳しい経緯は不明で、当局もまだ公式コメントを出していない。

高等裁判所が「待った」、それでもルト大統領は施設を擁護

実はすでに先週金曜、ケニア高等裁判所が施設開設の一時停止を命じていた。人権団体が「公衆衛生に対する深刻かつ差し迫ったリスク」を訴えて訴訟を起こしたのがきっかけで、法的には現時点で施設を動かせない状態にある。

それでもルト大統領は月曜夜、「ケニアは国民を守るためにあらゆる手段を講じてきた」と述べ、施設設置計画を擁護した。ナニュキ抗議デモで死者が出た当日の発言だっただけに、国内の反発はさらに強まる可能性がある。

ケニア エボラ隔離施設の問題が浮き彫りにしているのは、感染症対策の合理性と、地域住民の安全への感情的な不安とのギャップ。感染者がいない国に隔離施設を持ち込む計画は、どれだけ説明を尽くしても一定の反発を生む。その摩擦をどう処理するかのプロセスが、今回は後手に回ったらしい。

この先どうなる

高等裁判所の一時停止命令が出ている以上、施設の即時開設はないとみていい。ただ、訴訟の行方次第では計画が復活する可能性も残っている。ルト政権が米国との関係を維持しながら国内世論をどう収める戦略を取るか、次の数週間が分岐点になりそうだ。死者2人の銃撃をめぐる調査が進めば、治安部隊への責任追及という新たな政治的圧力も加わりかねない。コンゴのエボラ流行が収束しない限り、この問題は静かに消えてくれないだろう。