イラン衝突の報が届いた瞬間、原油と米国債の両市場が同じ方向へ動いた。これが厄介なのは、どちらか一方なら対処できるが、同時に起きると逃げ場がなくなるからだ。
原油と国債、「同時崩壊」が起きた理由
中東でイラン絡みの新たな衝突が再燃したとWSJが報じると、原油価格は供給不安を織り込んで急伸した。ここまでは「いつものパターン」と思うかもしれない。だが今回は米国債が同時に売られ、利回りが急上昇するという展開もセットでついてきた。
なぜ両方が同時に動いたか。原油高はインフレ再燃の予兆と市場に読まれ、「FRBは利下げを急げない」という思惑が国債の売りを加速させた。つまり原油急騰が、巡り巡って国債利回り上昇を引き起こしたわけで、一つの火種が連鎖したかたちといえる。
「イランの新たな衝突が原油価格と債券利回りを急騰させた」(The Wall Street Journal)
米国債利回りが上がると何が困るか。住宅ローン金利が上がり、株式の割引率が高まり、企業の借入コストが膨らむ。要するに経済全体に「じわじわ効く毒」として作用する。インフレが落ち着いたと思ったら、外から火をつけられた格好だ。
FRBの利下げ、中東リスクが壁になった3月ぶりの構図
タイミングがまずかった。FRBが利下げの地ならしを進めているこの局面で、米国債利回り上昇が再浮上すると、利下げの根拠が崩れかねない。インフレ指標が下がっても原油高が戻ってくれば、消費者物価への転嫁は避けられないからだ。
市場参加者が特に警戒しているのは、この手の中東リスクが「一時的」で終わらないシナリオ。ホルムズ海峡を通る原油の流通が少しでも詰まれば、価格への影響は長期化する。イラン衝突が局地的な話で収まるかどうか、週明けの原油先物の動きが一つの判断材料になりそうだ。
日本への影響も見逃せない。円安局面でエネルギーを輸入に頼る日本にとって、原油急騰と円安の同時進行は輸入コストを二段階で押し上げる。企業が値上げに踏み切れば、家計への圧力は再び強まる。「また値上げか」という状況が再現する可能性が、今この瞬間に高まっている。
この先どうなる
当面の焦点は三つ。イランの衝突がどこまで拡大するか、原油先物が節目の水準を抜けるか、そしてFRBが利下げ見通しを修正するかどうか。どれか一つでも悪化すれば、米国債利回り上昇の勢いはもう一段強まる可能性がある。日本銀行も静観を決め込んでいる余裕はなくなってくるかもしれない。地政学リスクが「遠い話」でなくなる局面が、また来た。