銅関税25%の発動期限まで、残り1ヶ月を切った。6月1日、ニューヨークとロンドンの銅先物が同時に上昇に転じたのは、その「カウントダウン」が市場に刻まれたからだろう。価格が動いた、というより、動かざるを得なかった——そんな印象を受けた。
チリ・カナダ・メキシコが震える、米国の銅輸入の実態
調べてみると、米国が輸入する銅の約半分はチリ・カナダ・メキシコの3カ国に依存していた。トランプ商品関税の射程に入るのは、まさにこのルートだ。25%の関税が現実になれば、輸入コストは跳ね上がり、製錬所や部品メーカーはサプライヤーの切り替えを迫られる。ただ、代替調達先がすぐに見つかるかといえば、かなり怪しい。銅の生産地は地理的に偏っており、短期間でサプライチェーンを組み替えるのは相当なハードルを伴う。
さらに気になったのが、中国の動きだ。備蓄拡大で需給の歪みを意図的に作り出しているとも読める。需要側の中国が市場から銅を吸い上げれば、供給逼迫の圧力はますます強まる。投機筋のロングポジションが急拡大しているのも、そのシグナルを拾ってのことらしい。
「銅はニューヨークとロンドンで上昇し、米国の関税に関してより明確な方向性が示されるとみられる重要な月の幕開けとなった。」(Bloomberg、2026年6月1日)
Bloombergが「6月が分岐点」と報じたのは大げさじゃない。関税が確定すれば、価格は一段高になるし、見送られても市場の不確実性プレミアムはしばらく消えないだろう。
EV・送電網・半導体——銅価格が上がると、どこが痛むか
銅サプライチェーンの混乱が怖いのは、影響が特定の業界に留まらないからだ。電気自動車1台に使われる銅は従来のガソリン車の3〜4倍。再生可能エネルギーの送電網は銅なしには成り立たない。半導体製造装置の配線にも銅は欠かせない。つまり、銅が高くなると、脱炭素・AI・半導体という「今の成長テーマ」が軒並み割高になるわけだ。製造コストの上昇が製品価格に転嫁されれば、消費者にも跳ね返ってくる。
関税の名目は「国内産業の保護」だが、実際には国内の銅消費産業がダメージを受けるという逆説もある。米国内の銅精錬能力は需要を大幅に下回っており、関税で国内生産が急に増えるわけでもない。
この先どうなる
6月末という期限に向けて、市場は3つのシナリオを織り込みにかかるとみられる。①予定通り25%発動、②一部品目・一部国への限定適用、③交渉継続を理由に延期——この3択だ。①なら銅価は一段高、②なら産地別の価格差が拡大、③なら短期的に利益確定売りが出るだろう。ただ、どのシナリオでも「関税リスクは消えない」という前提は変わらない。サプライチェーンの多元化を急ぐ動きは加速しそうだし、中国の備蓄戦略も続く。6月は相場を見るだけでなく、どの国・企業が次の手を打つかを追う月になりそう。