米イラン核交渉が暗礁に乗り上げた6月1日、原油は約1カ月ぶりの最大上昇幅を記録し、そのまま高値圏に張りついた。ブルームバーグが報じたこのニュース、単なる相場の話じゃない。世界の石油輸送の約20%が通過するホルムズ海峡の封鎖シナリオを、市場がいま本気で値段に乗せ始めているってことだ。
ホルムズ海峡「封鎖」シナリオ、なぜ今また浮上したのか
ホルムズ海峡封鎖リスクが再び表舞台に出てきた背景には、交渉の「決裂寸前」感がある。米・イラン双方の交渉担当者は複数回の接触を重ねてきたが、核開発の制限範囲と制裁解除のタイミングをめぐって溝が埋まらない。イラン側は段階的制裁解除を主張し、米側は「先に核活動を止めろ」の順番を崩さない。この堂々巡りがそのまま市場の不安として出てきた格好だ。
ホルムズ海峡は、ペルシャ湾沿岸国の原油をアジア・欧州に送り出す唯一の海上ルート。幅は最も狭い部分で約33キロしかなく、イランが軍艦や機雷で圧力をかけようと思えば物理的には難しくない。過去に何度も「封鎖するぞ」という脅しが出てきては相場が動いてきた場所でもある。
「米・イラン和平交渉の行方をめぐる不透明感が原油のリスクプレミアムを押し上げ、原油は約1カ月ぶり最大の上昇幅を記録した後、高値圏で推移した」(Bloomberg、2026年6月1日)
この一文が刺さるのは、「リスクプレミアムの再点火」という言葉遣いにある。プレミアムが「再び」点いたということは、一度は冷めていたってこと。交渉が始まった当初、市場はある程度の妥結を織り込んで原油をじわじわ下げていたはずだった。それがここへ来て逆回転した。
原油リスクプレミアムが動く時、日本が受ける波
原油リスクプレミアムが上昇する局面で真っ先に痛いのは、原油のほぼ全量を輸入に頼る日本だ。中東産原油への依存度は依然90%前後で、そのかなりの部分がホルムズ海峡を経由して届く。LNGタンカーも同じルートを使う船が多い。
ガソリン価格、電気代、物流コスト——どれも原油相場の上昇がじわりと乗っかってくる構造で、交渉がずるずると長引けば長引くほど、その分だけ家計への圧力も続く計算になる。2026年前半にかけて円安が重なっていることを考えると、輸入物価への影響は特に無視できない。
この先どうなる
交渉が完全決裂に至るシナリオと、ギリギリで妥結するシナリオ、そして現状のまま「話し合い継続」という宙ぶらりんが続くシナリオ——この3つが現時点で並走している。市場が最も嫌うのは実は3つ目で、不確実性が長期化するほど原油リスクプレミアムは削れにくくなる。
イラン核交渉の次の節目として、6月中旬に予定される非公式協議が注目されている。ここで何らかの合意の枠組みが出てくれば相場は一気に落ち着くだろうし、決裂報道が出れば今度こそホルムズ海峡をめぐる物理的な緊張が話題の中心になりかねない。原油相場は今、交渉テーブルの上の言葉を毎日値段に翻訳し続けている。しばらく目が離せない。