バナナ不足という言葉が、2026年の夏に現実の話になりつつある。Bloomberg(2026年6月1日付)が報じたところによると、日本のスーパーで最も売れている果物の在庫が、目に見えて細り始めているらしい。きっかけは遠くホルムズ海峡の先、中東情勢の緊張だった。

フィリピン産バナナが9割、その輸送ルートが今どうなっているか

調べてみると、日本のバナナ輸入におけるフィリピン依存度は約90%。つまりバナナの供給を語るとき、フィリピン産バナナ輸入の動向はほぼイコール日本の食卓事情になる。

そのフィリピンから日本への輸送は、スエズ運河経由のルートを一部利用している。中東の紛争激化でスエズ運河周辺の安全が損なわれると、船会社は喜望峰回りの迂回航路を選ばざるを得ない。所要日数は一気に伸び、燃料費も跳ね上がる。スエズ運河迂回の影響がじわじわとコンテナ運賃に乗ってきた結果、日本の輸入業者が発注量を絞り始めた——というのが今の流れだ。

「日本はバナナ不足の危機に近づいており、これは中東紛争に連鎖した最新の供給混乱となっている」(Bloomberg、2026年6月1日)

運賃が上がっても需要があれば輸入は続く。問題は、上がったコストを誰が吸収するかが見えないままになっていることで、輸入業者が「様子見」に入ってしまっているのが在庫減の直接原因らしい。

価格が上がると最初に苦しくなるのは誰か——バナナ1房の政治経済学

バナナは日本で最も消費量の多い果物、というデータは農水省の統計でも確認できる。年間消費量はリンゴやみかんを上回り、特に幼児食や高齢者の栄養補給に使われることが多い。つまり価格が上がると、低所得世帯や介護施設の食費に真っ先に影響が出る。

円安と物価高が重なっているこのタイミングで、輸送コストの上乗せ分まで価格転嫁されると、1房100円台で買えていたバナナがじわじわ200円に近づく可能性も出てくる。他の輸入果物にも同じ構図は当てはまるが、バナナは代替品を探しにくい点で特にダメージが大きい。

ちなみにフィリピン産バナナ輸入は、産地の天候リスクや病害(バナナの疫病「TR4」)でもたびたび揺れてきた歴史がある。今回はそこに地政学リスクが加わった形で、単なる一時的な品薄で終わるかどうか、現時点では読みにくいところがある。

この先どうなる

中東情勢が短期で落ち着けば、スエズ運河迂回の必要性も下がり、輸送コストは正常化に向かうだろう。ただ、紛争が長期化した場合、日本の輸入業者がフィリピン以外の調達先——エクアドルやコスタリカなど中南米産——にシフトする動きが出てくる可能性がある。輸送距離はさらに伸びるため、コスト面では逆効果になりかねないが、リスク分散の観点から検討が始まるかもしれない。

政府サイドでは、食料安全保障の議論がここ数年続いているが、果物の輸送ルート多様化はほとんど手つかずのまま。「まさかバナナまで」という感覚が今の正直なところじゃないか。夏に向けて店頭価格がどう動くか、しばらく目を離せない。