イラン核交渉が、また動き始めたらしい。トランプがTruth Socialに短い一文を投稿したのは唐突に見えたが、水面下では5回を超えるオマーン経由の間接協議が積み上がっていた。しかも今回のイランは、3年前とは立場がまるで違う。

リアル通貨が過去最安値、インフレ40%超——イランが交渉を急ぐ本当の理由

イランの通貨リアルは、ここ数年で対ドル価値が数分の一に縮んだ。インフレ率は公式発表でも40%を超え、街の物価は庶民の実感ではそれ以上という声もある。制裁が続く限り、この状況に出口はない。つまりイランにとって、交渉テーブルにつくこと自体がもはや「オプション」ではなく「必要条件」になってきた——そう読むのが自然じゃないか。

トランプが投稿した言葉は短かった。

「イランは本当に合意を望んでいる。そして米国と我々の仲間にとって良い合意になるだろう。」

この一文に「署名へのプレッシャー」を読む向きは多い。バイデン政権下でJCPOA再建交渉が破綻してから3年。当時は双方の不信感が埋まらず、草案まで作りながら合意に至らなかった。今回は「イランが折れた」形でテーブルが整いつつあるという見方が、外交筋の間では広がっているようだ。

IAEAの査察権限と「核の閾値」——合意の中身はまだ霧の中

ただ、楽観は早い。交渉の核心はまだはっきりしていない。具体的に詰められていないとされるのが、IAEAの査察権限をどこまで認めるかという点と、核兵器開発への道を「完全に閉じる」かどうかという部分だ。イランはこれまで、高濃縮ウランの保有量をJCPOA上限の何十倍にも積み上げてきた。それをどう処理するか。制裁解除のタイミングと核活動の縮小をどう連動させるか。これが決まらなければ、合意は名ばかりになる。

トランプ政権が「米国に有利な合意」と繰り返し強調しているのも、国内向けの布石とみれば理解できる。2015年のオバマ政権時代にJCPOAが批判された最大の理由は「サンセット条項」——期限が来れば制限が外れる抜け穴があったことだった。今度はその轍を踏まないと示す必要がある。

この先どうなる

直近の焦点は、間接交渉から「直接交渉」に格上げされるかどうか。オマーンを仲介に使い続けるのは時間効率が悪く、トランプ流の「ディール外交」は最終局面で直談判を好む傾向がある。イラン側も最高指導者ハメネイの承認を得た形での対話なら、国内に説明がつく。夏前に何らかの枠組み合意が出てくれば、原油市場と中東の地政学リスク双方に影響が出てくる。「良い合意」の中身が明かされる日は、思ったより近いかもしれない。