ニューヨーク・タイムズ記者追放 中国——その4文字の組み合わせが、今週また世界を駆け巡った。台湾総統府報道官が北京を「問題製造国」と名指しで断罪したのは、単なる言葉の応酬ではなかったらしい。

台湾が「問題製造国」発言を選んだ理由

台湾の公式声明がここまで踏み込んだのは珍しい。総統府報道官は、中国が「根拠のない口実」を使って記者を処罰していると明言した。

「中国は『根拠のない口実』を使って記者を処罰しており、これは北京が『問題製造国』である証拠だ」

外交的に繊細な言葉を選びがちな台湾当局が、ここまではっきり言い切ったのはなぜか。調べると、中台関係が一段と緊張するタイミングで、北京の情報統制ぶりを国際社会に向けて「可視化する」戦略的な意図があると報じられていた。要するに、報道の自由を旗印に国際世論を引き寄せる外交カードとして使ったわけだ。

NYT・WSJ・WaPo——狙われた3紙に共通すること

今回のNYT記者追放は孤立した事件じゃない。ここ数年、中国国内で批判的な報道を続けたウォール・ストリート・ジャーナル、ワシントン・ポストの記者も相次いで国外追放の憂き目に遭っている。いずれも米国を代表する報道機関で、中国政府にとって「不都合な目」の役割を果たしてきたメディアだった。

パターンはほぼ同じだ。当局が「ビザ更新拒否」や「資格取り消し」という行政手続きを口実に使い、記者を静かに追い出す。正面切って「記事が気に入らない」とは言わない。それが「根拠のない口実」と台湾側が批判した部分でもある。

中国国内から外国メディアの目を組織的に排除していくと、現地で何が起きているかを独自に確認できる記者がいなくなる。情報源が中国当局の発表一本になっていく——そこが一番怖いところじゃないかと感じた。

この先どうなる

米中間でメディアをめぐる報復合戦が続く可能性は高い。米国側も過去に中国メディアを「外国使節団」として規制した経緯があり、双方が記者数を削り合う構図が定着しつつある。台湾が今回声明を出したことで、報道の自由を巡る国際的な連帯圧力が多少なりとも強まるかもしれない。ただ、中国が方針を変える兆しは今のところ見当たらない。北京が「問題製造国」呼ばわりに反発を強めれば、中台間の外交摩擦が新たな局面に入る可能性もある。NYT記者追放問題が、メディア規制の話にとどまらず地政学的な火種になりかねないと感じるのは、大げさじゃないはずだ。