FRB利上げ2025年への継続観測が再び強まっている——しかも今回の厄介なところは、「もう少し待てば下がる」という期待が、データのたびに裏切られていることだ。米労働省が発表した最新のCPIは市場予想をわずかに上回り、連邦準備制度理事会が早期に利下げへ転じる余地をさらに狭めた。ウォール・ストリート・ジャーナルも「FRBは従来の想定より長期にわたって引き締め的なスタンスを維持せざるを得ない」と報じており、楽観シナリオはほぼ消えかかっている。
住宅ローン7%超が続く——中間層が最初に詰む
CPI高止まりの影響が最も直撃しているのは、住宅を買おうとしている普通のアメリカ人じゃないかと思う。30年固定の住宅ローン金利は7%を超えたまま推移しており、パンデミック前の3%台と比べると月々の返済額は文字通り倍近くになる計算だ。
年収8万ドル前後の世帯が手の届く物件は急速に絞られ、賃貸市場にも人口が流れ込み続けているため、家賃は高止まりのまま。住宅コストはCPI自体の押し上げ要因にもなっており、「インフレが住宅コストを上げ、住宅コストがインフレを維持する」という循環が固定化しつつあるらしい。
「米国のインフレは依然として頑固に高止まりしており、連邦準備制度理事会が従来の想定より長期にわたって引き締め的な金融政策スタンスを維持する必要があるとの見方を強める結果となった。」(ウォール・ストリート・ジャーナル)
企業側でも設備投資の先送りが目立ち始めた。金利が高ければ借り入れコストが上がり、ROIの計算が合わなくなるのは当然の話で、雇用の伸びにも陰りが出てきたとの指摘が相次いでいる。
ドル高が新興国を追い詰め、日銀・ECBも身動きが取れない
Higher for Longerの影響はアメリカ国内で完結しない。ドル高が長期化するほど、ドル建て債務を抱える新興国の返済負担は膨らむ。アルゼンチン、トルコ、エジプトといった国々がすでに外貨準備の目減りに苦しんでいる中、FRBが利下げを後回しにし続ければ、債務危機の連鎖が起きるリスクは決して小さくない。
日本と欧州の中央銀行も頭が痛いところだ。ドル高・円安・ユーロ安が進む局面で安易に利下げに踏み切れば通貨安に拍車がかかる。結果として日銀もECBも、本来は自国経済の事情で判断すべき金融政策を、ワシントンの動向待ちで決めざるを得ない構図になっている。
この先どうなる
次の焦点は6月と7月のCPIと、FOMCの声明文の文言だ。「利上げ打ち止め」の文脈が残るのか、それとも追加利上げの可能性を改めて示唆するのか——そこで市場の体感温度が大きく変わる。
楽観シナリオとしては、エネルギー価格の落ち着きやサービス業のコスト低下がCPIを押し下げ、秋以降の利下げ観測が復活するパターン。悲観シナリオは、賃金インフレが粘り続けてFRBが年内の利下げを完全に封印し、Higher for Longerが2026年まで長引くケース。どちらに転ぶにせよ、住宅ローン金利と新興国の外貨準備高は、その答えを一番早く映し出すバロメーターになりそうだ。