シャドーフリートの摘発が、また1隻分進んだ。フランス海軍とイギリスが日曜日に共同作戦を展開し、制裁対象のロシア系タンカー「タゴル号」をブルターニュ沖約740キロの大西洋上で拿捕した。2025年9月以降、フランスが制圧したシャドーフリート船舶としては4隻目にあたる。
「虚偽の旗」で航行中だったタゴル号、英ヘリが追い詰めた
拿捕時、タゴル号は虚偽の旗を掲げて航行していたことが海事当局の確認で明らかになった。追跡・監視を担ったのは英海軍フリゲート艦HMSサマセット搭載のヘリコプター。英国防省はBBCに対し、このヘリが「フランスの作戦を支援するかたちで追跡と監視を行った」と説明している。フランス側が制圧作戦を主導し、イギリスが目の役割を果たした格好だ。
マクロン仏大統領はXへの投稿でこう記した。
「船舶が国際制裁を回避し、海洋法に違反し、ロシアがウクライナに対して続ける戦争に資金を提供することは許容できない」
さらに「イギリスを含む同盟国とともに、海洋法に厳格に従って実施した」と強調。国際法上の正当性を先手で押さえにいった点は読んでおく必要がある。
ロシア石油制裁を骨抜きにしてきた「影の船団」、その仕組み
ロシアは2022年2月の全面侵攻以降、西側の制裁でエネルギー輸出が締め上げられると、所有者構造を巧みに隠蔽したタンカー群を世界中に走らせてきた。これがシャドーフリートと呼ばれる影の船団で、旗国を偽ったり、ペーパーカンパニーを幾重にも重ねた所有形態を使ったりして、ロシア石油制裁の網をくぐり抜けてきた。
タゴル号拿捕はその典型的な手口を現場で押さえた事例といえる。虚偽の旗という単純かつ古典的な偽装が、2025年時点でもまだ使われていたことはむしろ驚きかもしれない。
クレムリンのペスコフ報道官は今回の拿捕を「違法行為であり、国際的な海賊行為に等しい」と非難し、「ロシアは積み荷の安全確保に向けた措置を講じている」と述べた。ただし、具体的な対抗手段には言及がなかった。
この先どうなる
フランスが9月以降わずか数か月で4隻を拿捕したペースはかなり速い。英仏が連携した今回のオペレーションが成功すれば、NATO諸国が個別に動くのではなく、複数国の艦艇・航空機を組み合わせた共同監視体制が定着する可能性がある。
ロシア側は「海賊行為」と叫んでいるが、マクロンが先手で「海洋法に厳格に従った」と宣言した点がポイントで、法的正当性の主導権争いもすでに始まっている。タゴル号の積み荷と船籍の詳細が今後明らかになれば、どこの企業・国家がロシア石油制裁をどこまで助けていたかが浮かび上がる可能性もある。シャドーフリートの包囲網が狭まるなか、次に拿捕されるのはどの航路か。5隻目の報告が出るのは時間の問題かもしれない。