パキスタン インフレが再び上向いた——引き金を引いたのは、中東の軍事衝突だった。Bloombergが報じたところによると、イラン周辺での戦闘激化がエネルギーコストを押し上げ、2億4000万人規模の経済に直撃を食らわせたという。「中東の話は自分たちには関係ない」と思っていたら、大間違いだったらしい。
パイプライン一本が命綱——イランへの依存がそのまま急所になった
パキスタンはイランから陸路のパイプラインを通じてガスを輸入している。海上輸送ではなく、まさに一本の管で繋がっている状態だ。イラン情勢が悪化すれば、その管が細くなる——あるいは止まる。それが燃料価格に直結する仕組みで、供給不安が出た瞬間に市場が反応した。
電力不足もここに重なってくる。ガス供給が不安定になれば発電コストが跳ね上がり、ただでさえ停電が常態化している国内の電力事情がさらに悪化する。物価高と電力不足が同時に来れば、家計へのダメージは足し算ではなく掛け算になる。
「Pakistan Inflation Climbs as Iran War Drives Energy Costs」——Bloomberg, 2026年6月1日
中東 地政学リスクが「遠い話」で済んだ時代は、少なくともパキスタンにとってはもう終わっている。インフレ再加速は、その事実を数字で突きつけた形だ。
IMF管理下で迎えた最悪のタイミング——財政再建と外部ショックの板挟み
パキスタンは現在、IMFの融資プログラムの下で財政再建を進めている最中。補助金削減や歳出カットを進めながら、どうにかデフォルトを回避してきた経緯がある。ここにイラン エネルギー危機の波が来た。
財政再建中の政府が取れる手は限られている。エネルギー価格の上昇を補助金で吸収しようとすれば、IMFとの約束を破ることになる。かといって市場価格をそのまま国民に転嫁すれば、インフレはさらに加速して政治的不満が爆発しかねない。どちらに動いてもコストが発生する、典型的な「板挟み」の状況だ。
外部からのエネルギーショックは、政府が「政策で対処できる範囲」を超えているという点で、国内の財政問題とは性質が違う。それがこの局面を難しくしている。
この先どうなる
イラン周辺の軍事情勢が短期間で収束すれば、エネルギーコストへの上昇圧力も和らぐ可能性はある。ただ、中東 地政学リスクが高止まりしたまま推移すれば、パキスタンのインフレ圧力は当面解消しない。IMFとの次回審査でエネルギー補助金問題がどう扱われるかも焦点になりそうだ。パイプライン依存の脆弱性が今回あらためて露わになった以上、長期的なエネルギー調達先の多様化を迫られることになるだろう——ただし、それには時間もカネもかかる。