米イラン核合意が「あと一歩」という観測が市場に火をつけた。S&P500は週間ベースで過去にほとんど例のない連騰ペースを刻み、Bloombergは「歴史的な週間上昇記録に向かっている」と伝えた。株が上がった理由はシンプルで、原油価格が下がりそうだから、という話らしい。
イラン制裁緩和で原油100万バレルが市場に戻る?
イランへの制裁が解除されれば、同国は日量約100万バレルを市場に戻せる規模の生産能力を持っている。エネルギーコストが下がれば、輸送費・製造コストが下がり、消費者の可処分所得が増え、企業収益が上向く。投資家はその連鎖を株価に組み込んで先に動いた格好で、ある意味で「事実より早い相場」が出来上がっている。
今回のラリーはその典型で、合意が成立したわけではない。交渉が合意に近いらしい、という観測が値動きを作っているわけで、そこに強さと脆さが同居している。
「米国・イランをめぐる思惑から、株式市場は歴史的な週間上昇記録に向かっている」(Bloomberg, 2025年5月29日)
S&P500週間連騰という言葉が独り歩きしているが、数字のインパクトとは別に、その裏側でどんな取引が起きているかも気になるところだった。調べると、原油先物の売り圧力、エネルギー株の利益確定、短期のショートカバーが混在していて、上昇の質は一枚岩じゃないとわかる。
革命防衛隊と核濃縮——最後の壁がまだ残っている
冷静に交渉の現状を見ると、革命防衛隊の扱いと核濃縮の上限設定という2つの難題がいまだ未決着のまま続いている。革命防衛隊はイランの経済・軍事の両方に深く食い込んでいて、米国が「制裁対象から外せ」という要求を飲むのは政治的に難しい。一方のイランも濃縮レベルで譲れないラインを主張しているとされ、ここが崩れると交渉全体が白紙に戻りかねない。
つまり現状は、最終合意に向けた「最後の10%」を双方が綱引きしている段階で、そこに不確実性が詰まっている。イラン制裁緩和の恩恵を織り込んだ株高が一夜で逆回転するシナリオは、決してゼロじゃない。
この先どうなる
近く予定される交渉の次のラウンドが、相場の分岐点になりそうだ。合意の骨格が固まれば、原油安・株高のセットで市場は一段上に行く可能性がある。逆に革命防衛隊や濃縮レベルで交渉が決裂すれば、期待で積み上がったロングポジションの解消売りが来る展開も頭に入れておく必要があるだろう。今の株高が「期待買い」である以上、ニュースに対する感度は通常より高い状態が続く。発表のたびに値が飛ぶ局面が、しばらく続くんじゃないかと見ている。