米軍イラン追加攻撃が実施された——停戦交渉のテーブルが続く最中に、だ。ペンタゴンが正式に認めたこの事実、普通の軍事作戦とは少し違う匂いがした。交渉させながら爆撃する。その二つを同時に走らせた国家指導者は、歴史を振り返ってもそう多くない。

トランプ「瀕死の交渉」発言が意味する外交圧力の使い方

トランプ大統領は記者団に対し、こう言い放った。

「イランは瀕死の状態で交渉している」

これ、失言じゃないと思う。むしろ計算された一言だったんじゃないか。交渉相手の弱さを公開の場で宣言することで、国内の強硬派へのアピールと、イランへの心理的圧力を同時に達成している。トランプ外交圧力の使い方として、これは教科書に載りそうなレベルの露骨さだった。
ただ、こういうやり方はリスクも抱える。イラン国内では強硬派が「屈辱外交」として反発を強めており、穏健派が交渉を続けたくても国内世論が許さない状況になりつつある。

ホルムズ海峡リスク——原油2割が通る「喉元」を誰が押さえるか

今回の追加攻撃で改めて注目が集まったのが、ホルムズ海峡だ。世界の原油供給のおよそ2割がここを通過する。イランが本気で「封鎖」を選択肢に入れた瞬間、日本を含む原油輸入国のエネルギーコストは跳ね上がる計算になる。
実際には封鎖は自国経済も直撃するため「ブラフ」と見る専門家も多いが、軍事的に追い詰められたイランが合理的な判断だけで動くとも限らない。ホルムズ海峡リスクが現実の話として語られているのは、そういう背景があってのことだ。
さらに、中国とロシアの動きも見逃せない。ロシアはすでに「一方的な武力行使に反対」との声明を出しており、中国はイラン産石油の最大の買い手として経済的な損害を避けたい思惑が透けている。米国が軍事圧力をかけ続けるほど、中ロがイランの「後ろ盾」として存在感を増す構図が生まれつつある。

この先どうなる

当面の焦点は三つ。一つ目は、イランが交渉を継続するか離脱するかの判断。強硬派が主導権を握れば、核開発の加速という「最悪のカード」が切られる可能性がある。二つ目は、核合意の枠組みを誰が保証するか。米国が軍事と外交を同時進行させる今、欧州・中ロの仲介役としての機能がかつてなく重要になっている。三つ目はホルムズ海峡の動向で、原油先物市場はすでに神経質な値動きを見せている。
爆撃と交渉を並走させる戦略が「屈服を引き出した一手」になるのか、「外交の終わりの始まり」になるのか——それはたぶん、これから数週間の動きが決める。