台湾GDP成長率の見通しが、2026年に9%超へ大幅に引き上げられた。Bloombergが5月29日に報じたこの数字、正直なところ最初に見て「桁を間違えたかな」と思った。先進国・中進国を問わず、これほどの成長率はちょっと聞いたことがない水準だ。

TSMC受注急増――9%超の成長を1社が支えている

原動力はほぼ一点に絞られる。AI向け半導体需要の爆発だ。NVIDIAのGPUをはじめ、クラウド大手のデータセンター投資がすべてTSMCの製造能力に依存している以上、世界がAIへの投資を加速するたびに、その恩恵がダイレクトに台湾の数字へ跳ね返ってくる仕組みになっていた。

面白いのは、これが「たまたまTSMCが強かった」という話では済まないところだ。半導体サプライチェーンの上流にいる台湾の素材・装置・パッケージング各社も軒並み受注を積み上げているらしく、エコシステム全体が底上げされている格好になっている。

「Taiwan Lifts 2026 Growth Outlook to More Than 9% on AI Hunger」(Bloomberg, 2026年5月29日)

「AI hunger(AI飢餓)」という言葉を見出しに据えたBloombergのセンスが引っかかった。需要というより渇望に近い、それくらい世界のデータセンターは半導体を欲している、ということだろう。

台湾海峡リスクが「世界経済の体温計」になった理由

ただ、この好景気には裏面がある。TSMC AI需要の集中と、それに伴う地政学的リスクの拡大だ。半導体サプライチェーンの要が台湾の一角に集まっている以上、地政学的な緊張が高まるたびに世界中の市場が台湾海峡の動向を気にせざるを得ない構図は、もはや常態になっていた。

過去数年の動きを振り返ると、これは分散しようとしてもなかなか分散できない性質の集中だったりする。米国の補助金を受けたTSMCのアリゾナ工場建設は進んでいるとはいえ、最先端プロセスのキャパシティが台湾外で本格稼働するまでには、まだ相当な時間がかかりそうだ。結果として、世界がAIに賭けるほど台湾依存が深まる、という構造がしばらく続きそうな気がしている。

この先どうなる

9%超という数字は2026年通年の見通しであり、当然ながら下振れリスクもある。米中関係や台湾海峡情勢が急変した場合の衝撃は、もはや台湾一国では吸収しきれない規模になっている。一方で、AI投資サイクルが2027年以降も続くとすれば、この高成長が「一時の特需」で終わらない可能性もある。注目ポイントは二つ。TSMCが次世代プロセスの量産移行をどのペースで進めるか、そして米国・日本・欧州が進める「脱・台湾集中」の代替拠点がどこまで育つか。その答えが出始めるのは、おそらく2027〜2028年頃になりそうだ。