マクロン解散総選挙の宣言は、得票数が出た当日の夜に発された。欧州議会選挙でルペン率いる国民連合が与党連合のほぼ2倍の票を積み上げた——その数字が出た夜、マクロンはテレビカメラの前でフランス国民議会の解散と6月の総選挙を宣言した。欧州の主要国でこれほど急な幕引きが選ばれたのは異例で、市場が反応するより先に政治の地殻が動いていた。

ルペン国民連合、EU選で与党の2倍を獲得した衝撃

今回の欧州議会選挙でルペン国民連合が記録した得票率は、マクロン陣営を20ポイント以上引き離したとされる。単純な数字で言えば「2倍近い支持」という結果で、これは一時的な抗議票では説明しにくいレベルらしい。

背景を少し掘ると、移民問題への不満、生活コストの高騰、そして「マクロンは遠い」という感覚が積み重なってきた経緯がある。国民連合は長年、こうした不満を吸い上げる受け皿として機能してきた政党で、今回は若年層への浸透も目立ったという。

「フランスのエマニュエル・マクロン大統領は日曜日、欧州議会選挙でマリーヌ・ルペン率いる極右『国民連合』に自らの中道連立が大敗を喫したことを受け、国民議会の解散・総選挙を宣言した」(ウォール・ストリート・ジャーナル)

マクロン自身、このタイミングでの解散に「リスクがある」と認識していたはずで、それでも踏み切ったのは「曖昧なまま続けることへの恐怖」が上回ったんじゃないか、という見方が政治アナリストの間では広まっていた。

ユーロ売りが走った理由——欧州秩序への3つの波及

金融市場が即座にユーロ売りで反応したのは、フランス極右政権の誕生が「単なる内政問題」では済まないからだろう。整理するとざっくり3点。

まずNATOの結束。ルペンはこれまでロシアとの関係をめぐって曖昧な姿勢をとってきた経緯があり、ウクライナ支援の継続にも慎重な立場を示してきた。次にEU財政統合の行方。フランスはドイツとともにEUの屋台骨で、その一方が反EU色の強い政権になれば共同債発行や財政ルールの議論がかき乱される。そして三つ目が市場の「フランス国債プレミアム」——リスクを織り込んだ金利上昇は、財政余力が細っているフランスには痛手だった。

ルペン国民連合欧州議会選挙での躍進が、フランス国内の政権交代に留まらず欧州秩序への疑問符として読まれている、というのがここ数日の市場と外交関係者の共通した読み筋だった。

この先どうなる

6月に設定された国民議会総選挙の第1回投票が最初のヤマ場。世論調査では国民連合が第1党となる可能性が高いとされているが、フランスの2回投票制では「決選投票での共闘」が伝統的な対抗手段として使われてきた。左派と中道がどこまで票をまとめられるかが焦点で、ここ数日で各党の動きが一気に加速しそうな情勢だった。

仮に国民連合が過半数を獲り首相を出せば、マクロンが大統領に留まりながら極右首相と「コアビタシオン(同居)」に入るという前代未聞の構図が生まれる。その場合のウクライナ支援継続やEU内の意思決定への影響は、欧州全体の問題として大西洋の向こうにまで波紋を広げることになる。フランスが今、どっちに転ぶかを世界が固唾をのんで見守っているってところ。