ホルムズ海峡タンカー封鎖で身動きが取れなかった大型タンカーのうち、脱出できたのは全体の25%にとどまった——Bloombergが報じた数字は、思ったよりずっと重い。残る75隻超は依然としてペルシャ湾内に留まっており、「事態は収束に向かっている」という楽観論とは、かなり距離がある。

75隻が動けない。大型タンカー1隻=最大200万バレルの計算で考えると

大型タンカー1隻が積める原油は最大で約200万バレルとされる。仮に75隻がそのまま滞留すれば、理論上は1億5000万バレル相当の輸送が止まり続けることになる。世界の原油輸送量の約20%が通過するこの水域がボトルネックになれば、アジア向けのエネルギー供給網が受ける打撃は数字以上に複合的なものになりかねない。

特に日本、韓国、中国といった中東依存度の高い国々にとって、ペルシャ湾からの原油が届かない期間が長引けば、備蓄の取り崩しと価格転嫁の両面で対応を迫られることになる。今のところ原油価格は乱高下を繰り返しているが、滞留が長期化すれば話は別だろう。

「イランとの戦争によって足止めされていた大型原油タンカーのうち、4分の1が脱出に成功した」(Bloomberg、2026年5月29日)

裏を返せば、4分の3はまだ脱出できていないということでもある。「4分の1が脱出」という見出しはどことなく前向きな響きがあるが、数字をひっくり返してみると印象はだいぶ変わってくる。

ペルシャ湾原油輸送の回復、カギを握る3つの変数

現状を整理すると、ペルシャ湾原油輸送の正常化には少なくとも三つの要素が絡み合っている。一つ目はイランとイスラエル・米国間の停戦交渉の進展。二つ目はホルムズ海峡における航行安全の担保——具体的には護衛体制や機雷除去の有無。三つ目は保険会社が戦争リスク海域への出航を認めるかどうか、だ。

イラン戦争エネルギー影響という観点では、タンカーが物理的に動けるようになっても、保険引受が止まったままでは実質的に出航できないケースが出てくる。2022年のロシア産原油への制裁発動時にも類似の状況が起き、迂回ルートの模索とシャドーフリートの台頭を招いた経緯がある。今回もその再現が懸念されるところだ。

この先どうなる

脱出に成功した25%のタンカーがどのルートを通ったのか、護衛艦がついていたのか、詳細はまだ開示されていない。今後の焦点は、残る75隻が一斉に動き出せる環境が整うかどうかだろう。外交交渉がどこかで着地点を見つければ、滞留していた原油が一気に市場に流れ出し、逆に価格を押し下げる「供給サージ」が起きる可能性もある。封鎖が続くシナリオと、解除後の急激な緩和シナリオ、どちらに備えるかで見方はまるで変わってくる。市場がこの75隻の動向を追い続けるのは、しばらく続きそうだ。