ホルムズ海峡封鎖リスクが、外交の交渉テーブルではなくSNSの投稿欄に乗った。トランプ前大統領が2025年5月、Truth Socialに書き込んだのはわずか数行。だがその短文には、世界の原油供給の約20%を担う海峡の名前と、イランへの核放棄要求が並んでいた。

トランプ投稿の全文——「ホルムズ」の4文字が意味するもの

問題の投稿はこうだった。

「イランは核兵器または爆弾を絶対に持たないことに同意しなければならない。ホルムズ(海峡)——」

文末の「——」が示す通り、投稿は途中で切れたような形になっている。それが意図的な余白なのか、単純な送信ミスなのかはわからない。ただ、「ホルムズ」という固有名詞を置いた時点で、読む側への圧力としては十分すぎるほど機能する。ペルシャ湾と外洋をつなぐこの細い水路は幅わずか約50キロ。ここが機能不全になれば、サウジアラビア・UAE・イラク・クウェートの原油輸出がほぼ止まる。欧州やアジアへのLNG輸送にも直撃する。

イランが絶対に譲らない「ウラン濃縮の権利」と2025年交渉の現在地

イラン核交渉2025は、オマーン仲介のもとで米イランが間接対話を続けている段階だった。テヘランは一貫して「ウラン濃縮の権利は主権の問題」との立場を崩しておらず、完全な核武装放棄を前提条件にする交渉には応じない姿勢を示してきた。調べてみると、イラン側は今年に入ってから「合意の枠組みはあり得る」と若干トーンを緩めた発言も出しているが、濃縮停止と核兵器放棄を同一視することには激しく反発している。そこにトランプ対イラン最後通牒とも読める今回の投稿が飛び込んできた形で、交渉筋の反応は冷ややかだったらしい。「外部からの圧力は交渉を後退させる」という声が、関係者からすでに漏れ始めている。

一方で、これがトランプ流の「見せかけの強硬」である可能性も排除できない。2018年のJCPOA離脱時もそうだったが、トランプは交渉前に極端な条件を公開提示し、相手の出方を見てから動く傾向がある。今回のホルムズ言及も、イランを震え上がらせて妥協を引き出すための先手という読み方もできる。もっとも、それが本当に封鎖リスクの現実化につながれば話は別で、原油価格の急騰シナリオはアジア諸国の輸入コストに即座に響いてくる。

この先どうなる

最大の焦点は、イランがこの投稿をどう「公式に解釈する」かにかかっている。黙殺すれば交渉継続の可能性が残り、強硬反論に出れば米国内の強硬派に口実を与える。ホルムズ海峡封鎖リスクが現実の軍事行動に転じるには、イランにとってのレッドラインを米国が踏み越える必要がある。今のところそこまでは至っていないが、SNSの一文が外交の地図を書き換える時代に、「様子見」できる期間はそれほど長くないかもしれない。次の米イラン交渉ラウンドの日程と、その前後のトランプの投稿頻度——この二つを追っていると、地雷がどこにあるかが少しだけ見えてくる。