ホルムズ海峡封鎖が現実になれば、世界の原油輸送の約2割が止まる——その圧力を背景に、トランプ前大統領がTruth Socialで異例の二条件を突きつけた。核の永久放棄と、海峡の即時開放。短い投稿のはずが、二つの巨大な交渉テーブルを同時にひっくり返しかねない内容だった。

トランプが2つの「レッドライン」を同日投稿した理由

投稿の原文はこうだった。

「イランは核兵器・核爆弾を永遠に保有しないと合意しなければならない。ホルムズ海峡は直ちに開放されなければならない。」

注目したいのは「永遠に(forever)」という言葉の重さだ。2015年のJCPOA(包括的共同行動計画)は期限付きの制限だったが、今回の要求はそれとは次元が違う。核保有の完全・恒久的な放棄、つまり北朝鮮やリビア方式に近い「核廃絶」を求めている可能性がある。これをテヘランが飲めるわけがない、というのが大方の見方だろう。

一方でホルムズ海峡の「即時開放」要求も不思議な表現だった。現時点でイランが海峡を正式に封鎖しているわけではない。つまりこれは現状の停止命令ではなく、「封鎖をほのめかす言動をやめろ」という先制圧力として読むべきじゃないか。革命防衛隊が海峡付近で軍事演習を繰り返してきた文脈を踏まえると、その解釈が自然に見えてくる。

オマーン交渉が「静かに死ぬ」シナリオ——イラン核交渉の現在地

タイミングが問題だった。現在、イランと米国の間ではオマーンを仲介役とした秘密交渉が進んでいるとされている。イラン核交渉オマーンルートの特徴は、革命防衛隊の組織温存を暗黙の前提に置きながら、濃縮ウランの上限設定などで合意を探るものだった。外交筋によれば、最終期限が数週間以内に迫っているとも言われる。

その状況でトランプが「核の永久放棄」を公開投稿した意味は二通りに読める。交渉担当者へのプレッシャーとして機能させる「意図的なノイズ」か、あるいはオマーン交渉そのものを破棄する前段のシグナルか。どちらにせよ、革命防衛隊核放棄まで踏み込んだ要求がテーブルに乗れば、ロウハニ系穏健派がイラン国内で交渉継続を正当化する余地は狭まっていく。

日本にとって他人事では済まない話でもある。日本の原油輸入の約9割は中東ルートを通過し、その大半がホルムズ海峡を抜ける。ホルムズ海峡封鎖シナリオが金融市場で織り込まれるだけで、円安・エネルギーコスト上昇・物価への波及という連鎖が起きうる。

この先どうなる

イランの公式反応はまだ出ていない。最高指導者ハメネイ師や革命防衛隊が「交渉の余地なし」と発信するのか、外務省が「内容を検討中」と曖昧に受け流すのかで、次の局面が変わってくる。オマーン交渉が水面下で継続されるなら、トランプの投稿は「外向けのブラフ」として処理されていく可能性もある。ただ、期限が迫る中でこの発言が出た以上、次の数週間は原油先物市場と外交チャンネルの両方を同時に見ておく必要がありそうだ。静かに、でも確実に、分岐点は近づいている。