Kenya Ebola quarantine――その50床の施設に、ケニアの裁判所が「待った」をかけた。米当局者はウイルスに曝露した米国市民を収容するため、ケニア国内に施設を建設中だったと認めている。ケニア国民は知らないうちに、自分たちの土地に外国政府の隔離拠点が作られようとしていたわけで、それが「主権侵害」として法廷に持ち込まれた。
コンゴ東部220人超――エボラが「対岸の火事」でなくなった瞬間
この話を読み解くには、コンゴ東部の状況を外せない。感染者数が220人を超え、封じ込め体制が崩壊寸前とも言われる現地の混乱が、米国に「域外の安全拠点」を求めさせた。自国民が感染エリアで活動している以上、帰国前に隔離できる施設が必要だという理屈は、一応理解できる。
ただ、そこで選ばれた場所がケニアだった。建設が「進められていた」段階での発覚であり、ケニア政府や市民への事前の丁寧な説明があったかどうかは、今のところ不透明なままらしい。
「米当局者は、ウイルスに曝露した米国市民を収容するため、アフリカのケニアに50床の施設が設立されつつあると述べた」(The New York Times)
「設立されつつある」という表現が引っかかった。計画段階ではなく、もう動いていたということ。提訴した団体がそこに怒りを感じたのも、無理はないんじゃないか。
US Africa biosafety facilityが突きつけた非対称
米国がアフリカに感染症対応の施設を作ろうとするのは、今回が初めてではない。US Africa biosafety facilityをめぐる議論はエボラやマールブルグウイルスが話題になるたびに浮上し、そのたびに「誰のための施設か」という問いが残ってきた。
今回の施設は、ケニア国民の感染拡大を防ぐためではなく、あくまで「米国市民の収容」が目的とされている。アフリカの土地を使いながら、アフリカの人々のためではない。そのギャップが、「エボラ主権論争」の核心にある。
感染症対応における力の非対称、というのは難しい言葉だけど、要は「リスクをとる側と、施設が建つ側が違う」ということ。その違和感が今回、法廷という形で可視化された。
この先どうなる
裁判所の停止命令はあくまで緊急措置で、本審理がこれから始まる。ケニア政府が米国との関係を考慮してどう動くか、あるいは提訴団体が勝訴できるかは、まだ読めない。
ただ、アフリカ諸国が「医療主権」を理由に欧米の危機管理介入に抵抗するケースは増えていくだろうというのが大方の見方で、今回のケニアはその最初の大きなテストケースになるかもしれない。コンゴのエボラ情勢が悪化すれば、米国側の圧力も強まる。その綱引きが、今後数週間で一気に動く可能性がある。
