OPECプラス減産の拡大観測が浮上した月曜日、WTI原油先物は1バレル85ドルを突き抜けて今年の高値圏に迫った。「また産油国が絞る」という観測だけで、これだけ値が動く。裏を返せば、それほど市場の神経が張り詰めているってことでもある。

サウジの「もう一押し」で日量366万バレル減産がさらに膨らむ?

今回の価格急騰を引っ張っているのは、OPECプラスの次回閣僚会合をにらんだ思惑売買だった。サウジアラビアを筆頭とする主要産油国は現在、日量366万バレル規模の自主減産を実施中。それをさらに延長、あるいは上積みするという観測が静かに広がっていた。

市場参加者が怖いのは「会合前の不確実性」で、ポジションを軽くするどころか、供給タイト化に賭けるトレーダーが増えたらしい。実際、前週比でWTIの投機的買い越しは顕著に積み上がっていた。

「OPECプラスが次回会合でさらなる減産を発表するとの観測と、供給途絶への懸念から、原油価格は月曜日に急騰した。」(Reuters)

ロイターが指摘した「供給途絶への懸念」の中身がもう一つの圧力、ホルムズ海峡だった。

ホルムズ海峡地政学リスクがスポット市場を直撃した経緯

世界の原油輸送の約20%が通過するホルムズ海峡の周辺で、緊張が再び高まっていた。タンカーの保険料率が上昇し、スポット市場の運賃に即座に跳ね返った格好だ。WTI原油先物の上昇にとどまらず、ブレント原油も連動して上昇している。

ホルムズ海峡地政学リスクが厄介なのは、実際に封鎖が起きなくても「起きるかもしれない」という懸念だけで輸送コストが動く点にある。今回はまさにそのパターンで、実需よりも先に価格が動いた。

問題はここから先の波及ルートだ。原油が上がれば、ガソリン価格はほぼ2〜3週間のタイムラグで追随する。航空燃料コストの上昇は航空運賃に乗せられ、食品の物流コストも上がる。2022年のインフレ局面と構図が似てきた、という指摘が市場関係者から出始めている。FRBが利下げを模索しているタイミングで、このコスト上昇圧力はなかなか難儀な状況といえる。

この先どうなる

当面の焦点はOPECプラス閣僚会合の結論だろう。追加減産が正式に決定されれば、WTI原油先物が90ドル台を試す展開も視野に入る。一方、現行の減産水準を維持するにとどまれば、いったん売りが入って80ドル前後に落ち着く可能性もある。

ホルムズ海峡地政学リスクは中東情勢次第で急変するため、読みにくい変数として残り続ける。投資家目線では原油関連株や商品ETFへの資金流入が続きやすいが、消費者目線ではガソリン・光熱費の請求書が気になるところ。どちらの「原油85ドル」かは、あなたの立場次第でだいぶ変わってくる。