光ファイバードローンが、停戦中のイスラエル・レバノン国境で「最大の脅威」になっている——そう表現してもまったく大げさじゃない数字が出てきた。停戦発効以降に死亡したイスラエル兵11人と民間防衛契約者1人のうち、実に8人がこのドローンで命を落としているとBBCが報じた。戦闘停止のはずの6週間で、これだけの犠牲者が出ていることになる。

電波を使わない——それだけで既存の防衛システムが詰む

FPVドローン(ファースト・パーソン・ビュー型)自体は、ウクライナ戦線ですでに知られた存在だった。ところがヒズボラが使う機体は、制御信号を光ファイバーケーブルで伝送する。電波を出さないから、電波妨害(ジャミング)が根本的に効かない。イスラエル軍が長年蓄積してきた電子戦ノウハウが、ほぼ無力化されるってことだ。

国境の町ショメラでは、道路沿いに光ファイバーの残骸が点々と残っているらしい。町の評議会長、サミ・ザネッティはBBCにこう語った。

「問題は、来ていることが分からないことだ。座っていると、突然やってくる。逃げようとすると、追いかけてくる」

さらに衝撃的なのは、スクールバスが停留所を離れた数分後、その同じ停留所が攻撃されたという事実。タイミングを見計らっていたのか、たまたまなのか——どちらにせよ、民間インフラへの攻撃が増えているのは確かで、イスラエルのシンクタンク「アルマ研究センター」は停戦後だけで100件超の攻撃を記録している。

ウクライナが「教科書」になった日

ヒズボラがこの戦術を取り込んだ経緯を調べると、ウクライナ戦争の影が濃く見えてくる。ロシア・ウクライナ双方がFPVドローンを大量投入し、光ファイバー誘導の有効性を実証してきた。中東の武装組織がそこから学ぶのにかかった時間は、驚くほど短かった。

ヒズボラ イスラエル停戦の枠組みは一応維持されているが、100件超の攻撃が「停戦中」に起きているとなれば、その枠組みがどれだけ機能しているのかは疑わしい。FPVドローン中東への拡散という文脈で見れば、今レバノン国境で起きていることは、地域全体の軍事バランスに関わるテスト케이스だとも言える。

この先どうなる

イスラエル軍は現在も南レバノンの広い範囲を占領したまま展開しており、光ファイバードローンへの対抗手段の開発が急務になっている。物理的な迎撃(レーザー、短射程ミサイル)や、ケーブルを検知・切断するシステムの実用化が焦点になるとみられるが、実戦配備までには時間がかかる。一方、ヒズボラ側は100件超の攻撃実績を積み上げ、運用ノウハウを着実に蓄積している。停戦の「名前」が残っている間に、双方が次の一手を準備している——そんな局面が続きそうだ。