ECB利上げの根拠が、またひとつ積み上がった。フランスのインフレ率が2年超ぶりの高水準に達し、スペインの消費者物価も同時に急加速——5月29日に出そろったこの数字は、6月会合を前にした欧州中央銀行に対し、事実上の「背中押し」となった格好だった。
PGIMネイス氏が言い切った「25bp利上げ」のリアル
注目すべきはPGIMのエコノミスト、キャサリン・ネイス氏の発言だ。
「私のベースシナリオは、ECBが6月会合で25ベーシスポイントの利上げを行うというものです」
「ベースシナリオ」という言葉の重さは軽くない。可能性のひとつではなく、デフォルトの想定として提示している。フランスとスペインという規模の大きい二カ国が同じタイミングで物価加速を示したことで、据え置き派の声は少数意見に押し込まれつつあるらしい。市場コンセンサスが動く瞬間というのは、往々にしてこういうデータの重なりがきっかけになる。
ドイツ経済が「巻き添え」になるシナリオ
ただ、ここで引っかかるのが「利上げすれば万事解決」という話にならない点だ。欧州の高金利は住宅ローン金利を直撃し、企業の設備投資を削る。景気後退がすでに進行中のドイツにとって、この追加の金融引き締めはかなり堪える水準になりうる。フランスインフレやスペイン物価の問題は、ECBが一律の金融政策しか持てないユーロ圏の宿命とも絡んでいて、南北・東西で経済状態がバラバラなまま同じ金利を当てはめざるを得ないという、そもそもの難しさがある。
一方で利上げを見送れば、ユーロが売られ、エネルギーや輸入品のコストが上がり、インフレが再燃するという流れも十分ありえる。どちらに動いても何かを犠牲にするという状況で、ECBがどちらを「より小さな代償」と判断するかが焦点だろう。
この先どうなる
市場の視線はすでに6月会合の「25bp利上げ」から、その次——つまり「そこで止まるのか」というフェーズに移りつつある。フランスインフレが想定以上に粘着性を見せるなら、追加利上げの議論が夏以降も続くシナリオも排除できない。ドイツの景気指標が悪化するほど、ECB内の「ここで打ち止め」圧力も高まる。今後数週間で出てくるユーロ圏のCPIデータと、ECB高官の発言トーンが次の分岐点になるとみていい。