カザフスタン ウラン引き取りという、にわかには信じがたいニュースがIAEAから流れてきた。イランが積み上げてきた濃縮ウランの備蓄は、2015年の核合意(JCPOA)が定めた上限の約60倍。核兵器への転用まで「数週間」と指摘されるレベルにまで達しており、米イラン交渉を膠着させてきた最大の火種がここにある。それを文字どおり「別の国に移してしまおう」という話だ。
なぜカザフスタンなのか――核放棄の実績が信用になった
調べると、カザフスタンの立場がかなり特殊だとわかる。ソ連時代、セミパラチンスク核実験場として数百回の核爆発を経験した土地を抱えながら、1991年の独立後に核兵器を自ら放棄した国だ。旧ソ連から引き継いだ核弾頭を処分した実績は、NPT体制の外交史に残る判断として評価が高い。
その「核を持てたのに捨てた国」という信頼があるからこそ、今回の仲介役が現実味を帯びてくる。イランにとっても、アメリカにとっても、受け入れやすい第三者といえるんじゃないか。少なくともロシアや中国よりは、西側が難色を示しにくい。
「カザフスタンがイランの濃縮ウランの備蓄を引き取ることを申し出た。核合意締結に向けた取り組みの一環であると、国連の原子力機関が明らかにした。」(Financial Times)
IAEAがこれを公表したタイミングも見逃せない。米イラン間の非公式協議が続く中で、こうした「物理的な措置」を先に示すことで、交渉を後戻りさせない狙いがあるとも読める。
イランの濃縮ウラン備蓄、JCPOA上限の60倍が意味すること
2015年のJCPOA合意では、イランの低濃縮ウラン備蓄は約202キログラムに制限されていた。現在の推計はその60倍超。さらに60%濃縮(兵器級の90%まで一歩手前)のウランも相当量あるとされており、IAEAの査察官が「数週間で核兵器1個分」と警告するレベルに達している。
この備蓄をカザフスタンに移送できれば、交渉テーブルの空気が一変する。イランが「核の切り札」を手放す代わりに何を得るか——制裁解除の範囲と速度が次の焦点になってくる。イラン国内の強硬派がこれをどう受け取るかも、実行可能性を左右するだろう。
この先どうなる
仮にカザフスタンへの移送が実現すれば、イラン核合意の再建に向けた具体的なロードマップが一気に動き出す可能性がある。ただし、イランが応じるかどうかはまだ見えない。過去にもロシアへのウラン移送案が浮かんでは消えた経緯があり、合意は「移送先の提案」より「制裁解除の中身」で決まるという見方が現地では根強い。カザフスタンという新しいプレーヤーが加わったことで、交渉の地図は確かに変わった。あとは当事者が動けるかどうか、そこだけだ。