ホルムズ海峡封鎖が続いたまま、米軍がイランへの追加空爆に踏み切ったと報じられた。停戦60日の原則合意が伝わったのと、ほぼ同じタイミングで。原油市場は迷わず動いた――上昇方向に。
世界の石油20%が止まる、その意味
ホルムズ海峡は、世界の石油輸送量のおよそ20%が通過するルート。サウジアラビア、イラク、UAE、クウェートから積み出されるタンカーの大半がここを使う。封鎖が長引けば、アジアの製油所が最初にダメージを受けるのは地理的な必然で、すでにその影響が出始めているとも報じられた。
「20%」という数字が示すのは、代替ルートが簡単には存在しないということ。スエズ経由でもアフリカ南端回りでも、コストと時間が跳ね上がる。市場がこれだけ敏感に反応するのは、単に「不安」ではなく、数字の裏付けがあるから、という話だ。
「ホルムズ海峡が依然封鎖される中、米軍による新たな空爆の報告を受け原油価格が上昇した。」(Bloomberg, May 27)
この一文が象徴しているのは、停戦合意と空爆が「同時進行」しているという前例の少ない状況。外交テーブルと戦場が別々のタイムラインで動いている。
停戦合意があっても、価格が下がらない理由
米軍空爆イランの報道が出るたびに、原油先物は反応してきた。今回もその流れ通りだった。では、なぜ停戦60日の原則合意があっても価格が落ちないのか。
答えはシンプルで、トレーダーたちが「合意を額面通りに受け取っていない」から。原油価格上昇は恐怖指数ではなく、合意への不信任票に近い。過去の事例でも、停戦発表後に戦闘が再燃したケースは少なくなく、市場はそれを記憶している。
アジア経済への波及という点でも、日本・韓国・中国はいずれも中東産原油への依存度が高く、輸入コスト上昇はエネルギー価格全体に波及しやすい構造がある。企業の輸送コストや光熱費にじわじわ影響が出てくる、というのが実態だろう。
この先どうなる
焦点は二つ。ホルムズ海峡の封鎖がいつ解除されるか、そして停戦合意が「紙の上の話」で終わるかどうか。
現地の緊張が緩む気配を見せない中、米軍の追加空爆が報じられ続ければ、原油価格の上昇圧力は当面続くとみられる。停戦交渉が本格的に機能し始めるまでの間、エネルギー市場はニュース一本ごとに揺れる展開が続きそうだ。アジア各国が輸入先の多角化を急ぐ動きも、この先加速するんじゃないか。