エヌビディア決算が叩き出した数字——450億ドル——は、アナリスト予想を軽く突き破った。その夜、東京からソウル、フランクフルトまで、AI関連株は文字通り「世界同時急騰」を演じた。一社の四半期予測が地球を動かす光景、これが2025年の株式市場の日常になりつつある。
TSMC・SKハイニックス・日本勢——450億ドルが動かしたサプライチェーン
今回の上昇で面白かったのは、恩恵の広がり方だった。エヌビディア株が跳ね上がるのは想定内として、台湾のTSMCは製造受託の最大受益者として買われ、韓国のSKハイニックスはHBM(高帯域幅メモリ)需要の拡大期待で連動した。日本では半導体製造装置メーカーへの資金流入が目立ち、サプライチェーン全体がエヌビディアの決算を「自分事」として消化した格好だ。
時価総額が再び3兆ドル台を回復したことも象徴的で、これはアップルやマイクロソフトと肩を並べる水準。AIインフラへの投資が「夢」から「インフラ整備」の段階に入ったと市場が判断し始めている、そんな読み方もできる。
「エヌビディアの強気な業績予測がAIブームを加速させ、株式市場を押し上げた。同社は現四半期の売上高を450億ドルと予測し、アナリスト予想を大幅に上回った。」(The Associated Press)
ただ、調べれば調べるほど引っかかる点もある。データセンター向けGPUの受注残は積み上がっているものの、その需要の多くはハイパースケーラー(マイクロソフト・グーグル・アマゾン)の「設備投資競争」に支えられている。各社が一斉に手を引けば、需要が一気に萎む構造はそのままだ。AI半導体バブルの懸念は、楽観論の隣にずっと居座っている。
米中半導体規制という「見えない天井」
もう一つ見落とせないのが、米中半導体規制の動向だ。米国は先端半導体の対中輸出を段階的に締め上げており、エヌビディアは中国向けに性能を落とした製品(H20など)を展開してきた経緯がある。ところが規制の網は年々細かくなっていて、次の一手次第では中国市場からの収益が大きく削られるリスクが残る。
中国はエヌビディアにとって無視できない市場規模を持つ。そこへのアクセスが政治判断で突然塞がれる——この地政学的なリスクは、450億ドルという数字のどこにも織り込まれていない、というのが正直なところじゃないか。
この先どうなる
データセンター需要は2026年以降も拡大が見込まれており、エヌビディアの「Blackwell」アーキテクチャへの移行サイクルはまだ序盤だ。短期的には強気材料が続くと見る向きが多い。一方で、AI半導体バブルの議論は消えず、米中半導体規制の強化タイミングによっては市場のムードが一変する可能性もある。「バブルの頂点か、普及の入口か」という問いへの答えは、2026年の設備投資の実績が出そろうまで、おそらく誰にも断言できない。今は動向を追い続けるしかなさそうだ。