革命防衛隊による米軍基地への報復攻撃発表から、世界の石油輸送の2割を握るホルムズ海峡の「停戦」が音を立てて崩れ始めている。木曜未明のことだった。イラン南部への米軍空爆に対し、IRGC(イスラム革命防衛隊)は「米軍基地を標的にした」と声明を出した。どの基地を攻撃したかは、現時点で明かされていない。
停戦合意から数日――崩れるのが早すぎる
ついこの間、米・イランの間でホルムズ海峡をめぐる停戦合意が成立したと報じられたばかりだった。「脆弱」という評価がついて回っていた枠組みが、予想より早く試練にさらされた形だ。
ニューヨーク・タイムズはこの応酬について、こう報じた。
「この応酬は、脆弱な停戦を脅かしている」――The New York Times, 2026年5月28日
停戦合意が機能するには、双方が「先に撃ったのは相手だ」と言い張れる構造を避ける必要があった。ところが今回、米側の空爆→IRGC報復、という連鎖が成立してしまった。言い訳のしにくい往復ビンタだ。
原油・核合意・同盟――3つの震源がズレ始めた
ホルムズ海峡を通過する原油は、世界全体の海上輸送量の約20%に当たる。ここが戦場になると、まず市場が反応する。産油国への保険料率が跳ね上がり、タンカーが迂回を始め、価格に転嫁される。イラン核合意2026をめぐる交渉も同様で、軍事的エスカレーションが続けば外交テーブルはひっくり返る。
さらに厄介なのが同盟ラインの話だ。米軍基地が攻撃されたとなれば、米国内の世論と議会が黙っていない。トランプ政権がどこまで「外交決着」を優先できるか、国内政治の縛りがじわじわ効いてくる局面に入ってきた。
この先どうなる
焦点は三つある。一つ目は、「どの基地が標的にされたか」が公開されるタイミング。情報が出れば被害規模が判明し、米側の反応の強度が決まる。二つ目は、ホルムズ海峡での艦船の動き。通過停止や封鎖に近い動きが出れば、原油市場は即座に動く。三つ目が核合意交渉の継続可否だ。交渉継続を主張する勢力がどちら側にも残っているうちは、完全崩壊を防ぐ余地がある。ただ今回の応酬で、そのウィンドウが一気に狭まったのは確かだろう。次の48時間、どちらかが沈黙を選べるかどうかが全てを決めそうだ。
