ベイルート空爆が、また起きた。停戦発効からわずか数週間、イスラエル軍は現地時間14時、ベイルート南部の密集住宅地ダーヒーエを再び爆撃した。煙が住宅街に広がり、住民が互いの安否を呼び合う声が現場から届いている。今回の攻撃は「停戦破り」の文脈で語るには、少々重い背景がある。

標的はイラン民兵司令官――イマーム・ホセイン師団とは何者か

イスラエルメディアが報じた標的は、アリー・アル・フスニー。ヒズボラに連携するイラン民兵組織「イマーム・ホセイン師団」のミサイル部隊を率いる司令官とされる人物だ。IDFは攻撃を「標的を絞った形」と表現したが、具体的な被害状況や作戦の成否については口を閉ざしている。

イマーム・ホセイン師団はイラン革命防衛隊と連携し、レバノンを拠点に活動する武装集団の一つ。ヒズボラの「傘の下」にあると見られており、その司令官が今回の標的になったとすれば、イスラエルが単なる報復を超えた「指揮系統への打撃」を意図している可能性が高い。

「IDFは攻撃が『標的を絞った形で』実施されたと述べたが、詳細は明かさなかった。イスラエルメディアは匿名の情報源として、標的がイラン民兵の司令官だったと伝えた」(BBC News)

ネタニヤフ首相はすでに地上作戦の拡大を宣言済み。ヒズボラのドローン攻撃が引き金とされているが、今回の空爆はその「次の一手」として位置づけられているらしい。

トランプの「ベイルート不戦要請」が崩れた意味

ここで引っかかったのが、これまでのベイルートの扱いだった。今回の攻撃は、停戦後のベイルートへの空爆としては2度目。しかも、ベイルートはトランプ大統領の要請でこれまで攻撃対象から外されてきた経緯がある。

つまり、今回イスラエルはその「暗黙のルール」を破ったことになる。米国がどう反応するか――仲介役としての信頼が揺らぐのか、それとも黙認するのか――その答え次第で、レバノン停戦違反の「許容範囲」がどこにあるのかが見えてくる。

イスラエルとヒズボラはお互いに停戦違反を非難し合っている状況で、完全な停戦とは名ばかりになりつつある。南レバノンではIDFがザフラニ川以北への住民移動を勧告するなど、地上でも緊張は続いたまま。ベイルート空爆は、その延長線上に突然現れた「飛び石」のような攻撃ともいえる。

この先どうなる

最大の焦点は、米国がこの空爆をどう評価するかだろう。トランプ政権がベイルートへの攻撃自制を求めていた以上、今回の爆撃が「了承済み」なのか「想定外」なのかで、米イスラエル関係の温度感が読める。仲介交渉が静かに壊れていく予兆だとすれば、話は単なる停戦違反にとどまらない。イマーム・ホセイン師団への攻撃がイランをどこまで刺激するかも未知数で、レバノン停戦違反の応酬がより広い地域紛争の火種になりかねない展開も排除できない。次の48時間でヒズボラとイランがどう出るか、そしてワシントンが沈黙するのか声明を出すのか、そこを見ておきたい。