AI株高の波が、今度は大西洋を越えた。ゴールドマン・サックスが欧州市場向けに「AIトレードに乗る手段は豊富にある」と明言し、具体的な3銘柄を名指ししたのは5月27日。S&P500が再び高値圏に入る中、投資マネーの照準がアメリカ一極集中から欧州へと分散し始めているらしい。
ゴールドマンが欧州3銘柄を指名した理由
これまでAIトレードといえば、エヌビディアやマイクロソフトといった米国テック大手が主戦場だった。ところがゴールドマン・サックスのレポートを読み解くと、欧州でも半導体製造装置や産業用オートメーション、通信インフラ関連に投資機会があるという見立てが浮かび上がる。
米国市場のバリュエーションが既に高値警戒ゾーンに差し掛かっていることを考えると、割安感が残る欧州銘柄への資金流入は自然な流れじゃあるかもしれない。実際、欧州株指数は年初来で米国株に劣後していたが、ここにきて出遅れ修正の動きが出始めている。
「Plenty of Ways to Play AI Trade in Europe, Goldman Sachs Says」──Bloomberg, May 27
ゴールドマンがこのタイミングで欧州AIトレードを推奨してきた背景には、もう一つ読みがある。欧州中央銀行(ECB)の利下げサイクルが米連邦準備制度(FRB)より先行していること。金融緩和環境でバリュエーション拡大が起きやすい欧州株に、AI成長期待が重なった格好だ。
原油続落とイラン核交渉——資金が動く方程式
同じ日、原油価格は続落した。WTI原油先物は節目の水準を割り込み、エネルギーセクターから流出した資金がテクノロジー株に向かう構図が鮮明になっている。
原油下落の直接的な引き金はイラン核交渉の進展期待。米国とイランの間で協議が続いており、制裁緩和→イラン産原油の市場復帰というシナリオが供給懸念を後退させた。ただし核交渉は過去何度も「合意目前」で頓挫してきた歴史がある。今回の楽観論がどこまで持続するかは、まだわからない。
面白いのは、原油安がAI株高を加速させる連鎖だ。エネルギーコスト低下→データセンターの電力コスト圧縮→AI企業の収益改善期待、という読み筋を市場が織り込み始めているとしたら、単純な資金ローテーション以上の意味を持つ。調べたところ、AIデータセンターの電力消費量は2030年までに現在の3倍超に膨らむという試算もあり、エネルギー価格の動向はAIセクターの採算に直結する話でもある。
この先どうなる
ゴールドマン・サックス欧州AIトレードの推奨が実際の資金流入につながるか、最初の試金石は6月のECB会合と欧州テック企業の決算シーズンになりそうだ。米国でのAI投資ブームが「収益の裏付けあり」と市場に認知されたのは、マイクロソフトやアルファベットが実際にAI関連売上の急伸を決算で示してからだった。欧州銘柄にも同じハードルが待っている。
原油続落・イラン核交渉については、合意の具体的な文書が出てくるまでは「期待先行」の域を出ない。交渉が再び暗礁に乗り上げれば、原油反騰→エネルギー株回帰というリバースシナリオも十分ありうる。AI株高が続くかどうかは、意外と中東の外交テーブルの行方にも左右されている——そう思うと、マーケットって案外狭い世界だ。