ホルムズ海峡攻撃は、2度目だった。しかも米当局はイランの動きをあらかじめ把握した上で実行したとニューヨーク・タイムズが報じた。「予防的先制」とも「挑発への乗り」とも取れるこの判断が、中東情勢を一段と不安定な局面へ押し込んでいる。

世界の石油の20%が通る水路で、何が起きたか

ホルムズ海峡はペルシャ湾と外洋をつなぐ幅わずか約50キロの水路で、世界の石油輸送量の約20パーセントがここを経由する。サウジアラビア、UAE、クウェート、イラクの原油輸出の大半もこのルートに依存している。

米軍が周辺のイラン拠点を再び攻撃したのは、この地理的な急所をめぐる緊張が続く中でのこと。ただ今回が「再攻撃」であることは重要で、最初の攻撃からさほど間を置かずに2度目に踏み切ったことになる。偶発的なエスカレーションではなく、意図を持った継続的な圧力行使——そう読むのが自然だろう。

「米軍がホルムズ海峡付近の拠点を攻撃した後、イランは報復を警告した。」(The New York Times, 2026年5月26日)

NYTの報道で引っかかったのは「事前把握」の部分だった。米当局がイラン側の脅威情報を手にしていながら攻撃を実施したということは、交渉のテーブルと軍事オプションが並走していたことを示している。外交的な落としどころを探りながら、同時に相手を軍事的に締め上げる——この二重構造は、今のワシントンの対イラン戦略の縮図に見える。

イランの「報復宣言」が市場に落とす影

イランは攻撃直後に報復を宣言した。言葉だけで終わるのか、実力行使に出るのかはまだわからない。ただ、過去のパターンを振り返ると、イランが「宣言」した後に何もしなかったケースは少ない。代理組織を通じた間接報復、タンカーへの嫌がらせ、ホルムズ海峡の通航妨害——手札は複数ある。

米軍再攻撃とイラン報復宣言という組み合わせはエネルギー市場にとってもノイズではなく、シグナルだ。原油価格は短期的に乱高下しやすい状況に入ったとみていい。さらに船舶の保険料上昇→輸送コスト増→物価への波及、という連鎖も過去の事例で繰り返されてきたパターンだった。

この先どうなる

焦点は3つある。①イランが報復を実行するかどうか、②ホルムズ海峡の通航に実際の支障が出るかどうか、③米国が3度目の攻撃に踏み切るかどうか——この3つが連動して動く。

外交的な着地点があるとすれば、第三国の仲介か、何らかの「停戦合意」に近い枠組みだが、米当局が脅威を把握した上で攻撃を選んだという事実は、交渉への本気度に疑問符を付けることになる。当面は「言葉の戦争」と「散発的な軍事行動」が並走する展開が続きそうだった。原油市場と船舶ルートの動向が、次の一手を読む最も正直な指標になるんじゃないか。