ホルムズ海峡合意案の草案が表に出た。イラン国営メディアが報じた内容によれば、条件は二つだけ——オマーンと共同でホルムズ海峡の管理権を握ること、そして米国が展開する海上封鎖を完全に解除すること。世界の原油輸送量の約20パーセントが通過するこの28キロの水道が、いよいよ交渉テーブルの中心に載った形だ。
オマーンが「仲介」から「共同管理者」に変わる日
気になったのは、オマーンの役割の変化だ。これまでオマーンはイランと米国の間で「伝書鳩」として機能してきた。カボス前国王の時代から続く独自外交路線で、テヘランとワシントン双方に顔が利く数少ない国だった。
ところが今回の草案が示すのは、オマーンを「仲介者」ではなく「共同管理者」として海峡の実効支配に組み込む絵図だ。イランとしては、単独支配という印象を薄めながら既成事実を積み上げる戦術とも読める。オマーン側がこの役割をどこまで受け入れるかは、まだ明らかになっていない。
草案によれば、イランはオマーンと協力してホルムズ海峡の管理権を持ち、米国に対し海上封鎖の解除を求めるとされている。(The New York Times, 2026年5月27日)
米国はこの草案に対し、現時点でいかなるコメントも出していない。沈黙が戦術なのか、それとも内部調整中なのかは分からないが、封鎖解除という条件はかなりのハードルであることは間違いない。
原油価格20ドル跳ね上がりシナリオと、もし合意したら
市場参加者が最も神経を尖らせているのは、この交渉が決裂した場合の話だ。ホルムズ海峡が閉塞した場合、原油価格は即座に急騰するという試算は何度も出てきている。欧州は天然ガス供給の代替を探し続けている最中だし、日本・韓国・中国といった東アジアの主要輸入国への影響は直撃レベルになりうる。
逆に、もし米国がイラン オマーン 共同管理という枠組みを事実上承認し、米国 海上封鎖 解除に踏み切れば、原油相場はむしろ一時的に下落する可能性もある。制裁圧力が緩和すれば、イラン産原油が市場に戻ってくるからだ。その場合、サウジアラビアやUAEはまた別の計算が必要になってくる。
ただし「非公式の初期案」という但し書きは重い。外交交渉の世界では、リークされた草案がそのまま合意文書になることはほとんどない。むしろ、どちらかの側がプレッシャーをかけるためにあえてメディアに流す、という場面の方が多かったりする。今回もその可能性は十分ある。
この先どうなる
交渉が「非公式・流動的」な段階にある以上、次の注目点は米国がいつ・どのような形で応答するかだ。完全な沈黙を続けるのか、条件付き反論を出すのか、あるいはオマーンを通じた水面下の対話を加速させるのか。オマーン自身の公式発言も、まだ出ていない。
ホルムズ海峡合意案が現実の合意文書になるまでには、まだいくつものハードルがある。ただ、こういう草案がメディアに出てくること自体、交渉の温度が上がっているサインではある——と、少なくとも市場はそう受け取っているらしい。