S&P500が史上最高値で取引を終えた——そう聞いて「また?」と思った人もいるかもしれないが、今回の上昇には火種が二つ同時に燃えていた点が引っかかった。片方だけならよくある話。両方が一日に重なるのは、けっこう珍しい。
マイクロンが1兆ドル突破、AI株が指数を引っ張った日
上昇の一本柱はAI関連銘柄の再燃だった。マイクロン・テクノロジーの時価総額が1兆ドルを超え、半導体・クラウド株が指数全体を押し上げた。エヌビディアが話題になり始めた頃から「次はどこか」と言われ続けてきたメモリ分野で、ついにその数字が出た格好だ。投資家がAIテーマを「一部の銘柄の話」から「業界全体の底上げ」として読み直し始めているらしい、という空気がある。
もっとも、AI株が上がるたびに「バブルか実需か」という問いが繰り返されるのも事実で、今回のラリーがどちら側に転ぶかはまだわからない。
ホルムズ海峡が「封鎖されない」という観測だけで原油が動いた
もう一本の柱がイラン和平合意への期待だった。米国とイランの交渉が進展するとの観測が流れ、ホルムズ海峡封鎖リスクが後退。世界の原油輸送量の約2割が通るこの海峡が「使えなくなるかもしれない」という不安が消えるだけで、エネルギーコスト見通しが一気に改善された。
「イラン和平合意への楽観とAIテーマがS&P500を史上最高値で引けさせた」(Bloomberg、2026年5月26日)
ただ、ここが怖いところで、今の上昇は「合意が成立した」ではなく「成立するかもしれない」という期待値で動いている。イラン交渉は過去にも何度か暗礁に乗り上げてきた。イラン市場 vs AI株という組み合わせは、好材料のときは相乗りするが、どちらかが崩れると下げが増幅する構造でもある。
この先どうなる
当面の注目点はイラン交渉の行方だろう。合意が確定に近づけばエネルギーコスト安定が続き、リスク資産全般を支える。逆に交渉が再び止まれば、今回の上昇分を一気に吐き出す展開も十分ありえる。AI株については、マイクロンの1兆ドル達成が「次の銘柄探し」を加速させる可能性があり、短期的には物色の流れが続きそうだ。S&P500の史上最高値更新は明るいニュースだが、その土台の半分が「期待」でできているという点は、頭の片隅に置いておいた方がいいかもしれない。