ウクライナ弾薬連合から、9カ国が一斉に手を引いた——フィナンシャル・タイムズが報じたこの事実、数字だけ見ると「また外交的な小さなズレ」で済ませたくなるが、前線の砲兵部隊にとってはそんな話じゃない。

9カ国離脱の「言い訳」が、実は理にかなっている件

この連合は、欧州各国が共同でキーウへ砲弾を供給し続けるための枠組みとして機能してきた。参加国は砲弾の調達・備蓄・輸送を分担し、ウクライナの砲兵部隊が消耗戦を戦い続けられるよう支えてきた仕組みだ。

ただ、今回離脱した9カ国の言い分を聞いていると、完全に的外れとも言いにくい。NATOが東方防衛ライン——バルト三国からポーランドにかけての前線——の増強を急ぐ中、各国は自国の弾薬備蓄が底をつきかけていることに気づいた。ウクライナに回していた砲弾を、今度は自分たちのために確保しなければという判断が働いたらしい。再軍備の財源も人員も有限な中、「両立」は建前だったのかもしれない。

「9カ国がウクライナ弾薬連合から離脱し、欧州各国が自国の防衛需要に苦慮するなか、キーウへの砲弾供給努力に打撃を与えた」(フィナンシャル・タイムズ)

欧州再軍備の流れは2022年以降、加速の一途をたどってきた。それ自体はウクライナ支持の文脈で語られてきたはずなのに、結果として「自国防衛を固めるほど、ウクライナに回せる弾が減る」という皮肉な構図が出来上がった。

砲弾不足が「最大の脅威」——数字より重い前線の声

ウクライナの砲兵部隊が弾薬不足を最大の問題として訴え始めてから、すでに1年以上が経つ。ロシア軍との消耗戦では、砲弾の撃ち合い量が直接的に領土の増減に影響する。防衛省や軍事アナリストの試算では、ウクライナが必要とする月間砲弾消費量に対し、欧州からの供給はそれを大きく下回る水準が続いてきた。

そこへきて9カ国の離脱。砲弾不足 前線というキーワードで検索すると、今年だけで何十本もの報告が出てくる。この離脱が前線の消耗戦に直結するリスクは低くない、というより「直結している」と言ったほうが正確かもしれない。

西側諸国の結束は、首脳会議の声明文や外相の発言よりも、実際に届く砲弾の数で測られる——そういう局面に来た。言葉は連帯を謳っていても、倉庫が空ならキーウまで届かない。

この先どうなる

焦点は二つ。一つは、離脱した9カ国に代わる供給源を誰が担うか。米国の追加支援は議会次第で不安定なままで、残留国だけでギャップを埋め切れるかは見通せていない。もう一つは、欧州再軍備と対ウクライナ支援の「両立モデル」を誰かが設計し直せるかどうかだ。弾薬の共同生産拡大や調達ルートの多様化が議論されているが、それが前線の砲弾不足に間に合うペースかどうか、答えはまだ出ていない。連合の枠組みが縮小した今、次の手を誰がいつ打つかが問われる局面に入った。