中国EV関税の包囲網が、ついに英国を巻き込んで動き始めた。Reutersが複数の関係筋の話として報じたところによると、英国は日本・米国と水面下で協調し、中国製電気自動車への関税措置を共同で検討しているらしい。EUがすでに最大45%の追加関税を発動している中、これが現実になれば中国メーカーは欧米・日本という主要市場を一気に失う計算になる。

EUに続き英国参戦——45%関税の壁が世界に広がる

EUが中国製EVに最大45%の追加関税を課したのは2024年のこと。BYDやSAICを含む中国メーカーへの打撃は相当なものだったが、英国はEU離脱後も独自の通商政策を取っており、これまで中国EVに対して明確な高関税を導入していなかった。

そこに今回の報道が入ってきた。英国が日米と組んで関税の「協調行動」を検討しているとなると、話は単純な貿易摩擦じゃない。英国単独なら市場規模は限定的でも、日米とセットで動けば政治的なシグナルとしてのインパクトは桁違いだ。

「事情に詳しい複数の関係筋によると、英国は米国および日本と連携し、中国製電気自動車に関税を課すことを検討している」(Reuters報道より)

米国はすでにバイデン政権時代に中国製EVへの関税を100%に引き上げており、トランプ政権下でも対中強硬路線は続いている。日本も中国製EVの本格流入にはまだ至っていないが、サプライチェーン上の経済安全保障として中国製部品・車両への依存を警戒する動きが政府内で強まっていた。

EVは「車」じゃなく「動くデータセンター」——だから各国が本気になる

ここで引っかかったのが、なぜEVだけがこれほど安全保障の文脈で語られるのかという点だ。

現代のEVは車載ソフトウェアで走行データ・位置情報・乗員の行動パターンを常時収集している。中国メーカーのEVが英国の道路を走り回れば、そのデータが最終的にどこに流れるかという懸念は、TikTokや通信機器をめぐる議論と同じ構図といっていい。

加えて、EV向けのバッテリーや半導体のサプライチェーンは次世代の物流・エネルギーインフラと直結している。英日米が歩調を合わせているのは、そういった産業上の依存リスクを切り離したいという動機があるからじゃないか、と複数のアナリストは見ているようだ。

中国側の反応はまだ公式には出ていないが、過去のEU関税発動時には「保護主義的措置」として強く反発し、EU産ブランデーや豚肉への報復関税を発動した経緯がある。英日米が連携する場合、報復の矛先も分散・拡散する可能性がある。

この先どうなる

最大の焦点は、英国がどの水準の関税を設定するか、そして日本がどこまで踏み込むかという点だろう。日本の場合、国内市場への中国EV流入は現時点では限定的とはいえ、「予防的措置」として関税ルールを整備しておく動きは十分あり得る。

英日米の協調が正式に確認されれば、中国EVメーカーは「東南アジア・中東・アフリカへの迂回輸出」を加速させるとみられる。BYDはすでにタイやブラジルに工場を建設中で、関税を回避する現地生産戦略に舵を切りつつある。包囲網を敷いたとしても、中国がその外側に別の市場を育てるスピードとのいたちごっこになるのが現実だろう。英日米の次の一手が、2025年の通商秩序を決める試金石になりそうだ。