欧州熱波2025が、5月という時期に35℃超という数字を刻んだ。ロンドンで観測されたのは35.1℃——従来の5月記録を2℃以上も上回る値で、英国気象庁は「真夏でも例外的な水準」と表現した。春の話じゃない、もう夏どころか「異常」の域だったわけだ。

フランス「数百件」更新、ロンドン35℃超——5月の欧州に何が起きたか

フランスの気象機関メテオ・フランスによれば、今回の熱波で国内の気温記録が数百件単位で塗り替えられた。アイルランドでは5月の過去最高気温を1℃以上超え、ドイツ・イタリア・スペイン・スイスでも春とは思えない高温が続いた。広域にわたる同時多発的な記録更新——これが今回の熱波の最も不気味な点だろう。

直接の引き金は「熱ドーム」と呼ばれる気象現象だった。欧州上空に高気圧が「居座り」、暖気を蓋のように閉じ込めた状態が続いた。ただ、この現象自体は珍しいものじゃない。問題は、そこに積み重なった温暖化の「下駄」があったことで、科学者たちはその増幅効果を強調している。

コペルニクス気候変動サービスによれば、過去30年間で欧州は10年あたり0.56℃のペースで温暖化しており、これは世界平均の2倍以上にのぼる。

0.56℃という数字、小さく聞こえるかもしれない。でも10年で0.56℃というのは、30年で1.68℃のペースで底上げされ続けているってこと。熱ドームが来るたびに、その「床」が上がっていく構造が今の欧州にある。インペリアル・カレッジ・ロンドンのフリデリケ・オットー教授が「絶対的に驚異的」と述べたのも、そのスケールを知っているからだろう。

「熱ドーム×温暖化」の掛け算——欧州が世界より先に加速する理由

なぜ欧州だけここまで速いのか。コペルニクス気候変動サービスの分析では、地中海周辺の土壌乾燥や北極の温暖化による偏西風の乱れが、欧州での熱波を固定化しやすくしているとされる。熱ドームが「来る確率」と「長居する確率」の両方が上がっているわけで、今年5月の出来事は一発のイベントというより、この先の標準に近づいている可能性が高い。

マイヌース大学アイルランス気候研究センターのピーター・ソーン所長は「頭がおかしくなりそうなほど異常」とコメントしたらしい。科学者がここまで口語的な言葉を使うのは珍しいが、それだけ既存のスケール感では追いつかない変化が起きているということだろう。

この先どうなる

欧州熱波2025の今後について、コペルニクス気候変動サービスは夏本番に向けた継続的な監視体制を強化している。仮に今年の夏が2003年型の長期熱波に発展した場合、医療・農業・エネルギー供給への影響は広範囲に及ぶ。一方で、欧州各国政府が進める「冷却インフラ」整備や高齢者向け早期警戒システムの実効性が、今後の被害規模を左右するとみられている。5月の段階でここまで記録が崩れているなら、夏に向けた備えは早めるに越したことはない——と言いたいところだが、欧州の政策サイクルがその速度に追いつくかどうか、そこが最大の未知数かもしれない。