米軍南イラン攻撃の再開から数時間も経たないうちに、イランは正式な報復宣言を発した――停戦交渉のテーブルがまだ温かいうちに、だ。NYタイムズが伝えたこの事態、単なる軍事衝突のエスカレーションではなく、外交と爆撃が文字通り同時進行するという、近年ほとんど例を見ない構図になっている。
交渉中に爆弾を落とす、トランプ流の計算
調べて引っかかったのは、このタイミングだった。攻撃が行われたのは、戦争終結に向けた外交努力が続く最中のこと。ホワイトハウスは圧力をかけながら交渉を進める「並走戦略」を選んだとされるが、イラン側の受け取り方はまるで違ったらしい。報復宣言は感情的な反応ではなく、国内向けの政治的必然だったとも読める。最高指導者が「報復しない」と言える国内環境は、もはや残っていなかったんじゃないか。
「この脅迫は、アメリカ軍が南イランへの攻撃を再開した数時間後に発せられたものであり、戦争終結に向けた脆弱な外交努力が続く中でのことだった。」(The New York Times)
トランプ政権の賭けは明確だ。軍事圧力を最大化することでイランを交渉の席に縛り付ける。ただ、この手法が機能するかどうかは、相手がどこまで「屈服」を国内に説明できるかにかかっている。今の段階では、その余地はかなり狭まりつつある。
ホルムズ海峡封鎖なら原油価格は即日跳ね上がる
イラン報復宣言が市場に響く理由は地理にある。ペルシャ湾とホルムズ海峡は、世界の原油輸送量の約20%が通過する文字通りの咽喉部。ここが塞がれれば、日本、韓国、インドへの供給ルートが一瞬で詰まる。イランがこれを「使える切り札」として意識していることは、過去の発言からも明らかで、今回の報復宣言にはその含みも当然ある。ホルムズ海峡原油リスクが現実化した場合、エネルギー市場の反応は「じわじわ」ではなく「即日」になるだろう。
とはいえ、封鎖は諸刃の剣でもある。イラン自身の石油輸出も止まり、経済的ダメージは自国にも跳ね返る。だからこそ、これまで何度も「封鎖するぞ」と言いながら実行してこなかった経緯がある。今回もブラフで終わる可能性はゼロではない。ただ、国内の報復圧力がかつてないほど高まっているという点は、以前とは少し違う。
この先どうなる
焦点は二つ。ひとつは、イランが「宣言」を実際の軍事行動に移すかどうか。もうひとつは、トランプ政権が交渉の糸を保ったまま次の一手を打てるかどうか。外交チャンネルが完全に閉じていないうちは、最悪のシナリオは回避できるかもしれない。ただ、米軍南イラン攻撃がこのまま続けば、イラン側が「交渉より報復」に傾く国内世論を抑え込むのは難しくなる一方だ。ホルムズ海峡を巡る緊張が原油市場に織り込まれるのは、もう少し先になりそうだが、次の爆撃か次の宣言か、どちらかが引き金になるタイミングは近づいている。綱渡りが続く。