ラファ地上侵攻が本格化した日、そこには100万人を超える人間が逃げ場もなく密集していた。ガザ全土から流れ込んだ避難民たちが身を寄せるこの街に、イスラエル軍の地上部隊が踏み込んだ——国連が「人道的壊滅」という言葉を使ったのは、決して大げさじゃなかった。
100万人が押し込まれた街に、なぜ今、地上部隊が入ったのか
ラファはガザ地区の最南端、エジプトとの国境に接する小さな街だ。もともとの人口は数十万人規模だったが、イスラエル軍の北部・中部での作戦が続く中、行き場を失った避難民がなだれ込み、現在は100万人を超える人々が密集している。国際社会からは「安全地帯」として事実上の保護区扱いをされてきた場所でもある。
それでもイスラエル軍が動いた背景には、ハマスの残存部隊がラファに潜伏しているという軍事的判断があるとされる。ただ、現地の状況を調べると、軍事目標と民間人がほぼ分離不可能な環境になっているのが実情らしい。テントや仮設シェルターが密集した地域に、爆発物や戦車が入っていく——その絵面が何を意味するかは、言わずもがなだろう。
「イスラエル軍は月曜日、ラファへの進攻を深め、仲介者が地域を訪問する中、国連は100万人以上の避難民が身を寄せるガザ南部の都市で人道的大惨事が起きると警告した。」(AP通信)
WFP(世界食糧計画)の現地関係者は「飢餓の臨界点に達している」と報告している。食料・医薬品・燃料の供給ルートがすでに寸断されつつあり、ガザ人道危機は新しいフェーズに入ったとみるべき状況だ。米国による人道支援の大幅削減も重なって、民間人の生存環境が急速に悪化しているという報道が相次いでいる。
カタール外交使節が動いたのに、なぜ停戦協議は動かないのか
この日、仲介国カタールの外交使節がガザ周辺入りした。動きとしては「交渉継続」のシグナルに見えるが、実態は膠着状態のまま。イスラエル側は軍事作戦の継続を崩しておらず、ハマス側も釈放するとされる人質の条件で折り合いがついていないとされる。
国連の国際法上の警告、国際社会の批判、仲介国の動き——それらがすべて出そろっているのに、ラファへの地上侵攻は止まらなかった。「警告が出ても作戦は進む」というパターンが今回も繰り返されたわけで、外交的手段の限界を改めて感じさせる展開だった。
この先どうなる
最も注目すべきは、ラファの「フィラデルフィ回廊」——ガザとエジプトの境界沿いに走る戦略的な地帯の支配をイスラエルが掌握するかどうかだ。ここを押さえれば、ハマスへの武器・物資の密輸ルートを遮断できるとイスラエルは主張している。一方、エジプトはこの動きに強く反発しており、イスラエルとの外交関係が冷え込む可能性も出てきた。
停戦協議については、カタールとエジプトが引き続き仲介に動いているが、米国の影響力が後退している中で、どこまで実効性があるかは見えていない。ガザ人道危機が「人道的壊滅」という言葉通りの結末を迎えるのか、それとも土壇場で停戦の糸口が見つかるのか——この先数日の動きが、局面を大きく左右しそうだ。
