イラン核合意が再浮上するたびに、原油価格は動揺する——今回の3%超という急落は、市場が「合意成立」を祝ったのではなく、むしろその不確実性に怯えた結果だったらしい。WTI原油先物は一時3%を超える下落を記録し、トレーダーたちはイラン産原油の供給再開を早々と「織り込み」にかかった。

制裁解除なら日量150万バレルが市場に戻る計算

試算によれば、イランへの制裁が完全に解除された場合、世界市場には日量最大150万バレルが加わるとされている。現在の世界需要が日量約1億バレル強であることを考えると、1.5%分の供給増はじわじわと効いてくる数字だ。

価格が下がること自体は消費国にとって悪い話ではないが、今回の急落が「平和の配当」かといえば、そうとも言い切れない。WSJが指摘したように、これは合意成立を素直に歓迎した動きではなく、交渉が破綻するリスクまで含んだ、不安定な揺れに過ぎないというわけだ。

「米国とイランの核合意見通しを受けて原油価格が下落したが、合意への道筋が依然として不透明なため、投資家は慎重な姿勢を崩していない。」(The Wall Street Journal)

実際、交渉の中身は難航続き。イランの核活動を「完全停止」させるという絶対条件をめぐる溝は深く、専門家の間でも「合意にはまだ距離がある」という見方が根強い。

OPECプラスが最も恐れているシナリオ

もう一つ、見落とせないのがOPECプラスへの影響だ。サウジアラビアやロシアを中心に構成されるこの生産者連合は、原油価格を一定水準に保つために協調減産を続けてきた。そこにイランが大量の原油を引っさげて市場復帰すれば、これまでの生産調整戦略が根本から揺らぐリスクがある。

OPECプラス内でのイランの位置づけも複雑で、制裁下にあった間は生産枠の対象外として扱われてきた経緯がある。イラン制裁解除が現実になった場合、加盟国間の調整が再び必要になるのは確実で、それ自体が新たな不安定要因になりうる。WTI急落と中東地政学の連動は、今後も続きそうな気配だ。

市場参加者の間では「売り先行、後で考える」という動きが出やすい局面ではあるが、今回ばかりは楽観シナリオへの転換には相当の時間がかかりそうだ、という空気が漂っている。

この先どうなる

交渉が最終合意に向かうのか、あるいまた決裂するのか——その判断が出るまで、原油市場の乱高下は収まらないと見ておくべきだろう。仮に合意が成立した場合でも、イランが実際に輸出量を増やすまでには時間差があり、価格への影響は段階的になると予想される。一方、交渉が再度頓挫すれば、売られた分が一気に買い戻される展開も十分ありえる。OPECプラス イラン制裁解除というテーマは、2025年の原油市場で最も目が離せない変数の一つになりそうだ。次の交渉ラウンドの行方を、しっかり追っておきたい。