バロチスタン解放軍(BLA)が、最も「人が乗っているタイミング」を狙い澄ました。2025年のイード明け、軍人とその家族を乗せた帰省列車がクエッタのチャマン・ファタック駅付近を走行中、爆発物を積んだ車両が突入。死者は少なくとも20人、負傷者は70人を超えた。3両が脱線し、2両が転覆するという大惨事だった。

爆発物積載車が走行中の列車に突入——クエッタ列車爆破の現場

目撃者の証言によれば、爆発は突然で、近隣住民は眠っていた日曜の朝に窓ガラスが吹き飛ぶ音で目を覚ましたらしい。現場から届いた映像には、黒焦げになった車両と、周辺の建物に刻まれた爆風の跡が映っていた。

「列車は走行中で、乗客を乗せたまま爆発が起きた」——地元住民ナシール・アフメッド(BBCへのコメント)

死者20人のうち少なくとも3人は軍人と確認されている。パキスタンのシェバズ・シャリフ首相は攻撃を強く非難したが、バロチスタン州政府はすでにBLAによる自爆テロと断定。BLA自身も犯行声明を出している。

なぜイード帰省の軍用列車だったのか——BLAとCPECテロリスク

ここが引っかかったポイントだった。イード休暇明けの帰省ラッシュという「軍人が集中する時間帯」を狙ったこと、さらに自爆車両を使った突入という手口。これは行き当たりばったりじゃなく、相当な事前偵察と計画があったはずだ。

BLAは長年、バロチスタン州の独立を求めて活動してきた武装組織で、近年は中国主導のインフラ投資計画CPEC(中パ経済回廊)に関連する施設や人員を繰り返し標的にしてきた。パキスタン軍はバロチスタンで資源開発の警護とCPECルートの安全確保を一手に担っており、BLAにとって軍は象徴的な攻撃対象になっている。クエッタ列車爆破は、その文脈で起きた事件として見ると重さが変わってくる。

CPECテロリスクという観点では、2023〜2024年にも中国人技術者やパキスタン軍の護衛部隊が狙われる事件が続いていた。今回の攻撃がその延長線上にあるとすれば、BLAの組織的な動員能力は以前より高まっていると見るべきかもしれない。

この先どうなる

パキスタン軍はバロチスタンでの掃討作戦を強化する方向に動くだろう。ただ、過去の事例を見ると、軍事的な圧力がBLAの攻撃を止めるよりも、地元住民の反感を深めるパターンが繰り返されてきた。今回の攻撃が民間人を巻き込んだことで国際的な注目も集まりやすく、CPECへの投資継続を巡って中国側がパキスタン政府に安全確保を求める圧力も強まりそうだ。次の攻撃がいつ、どこを狙うかより、バロチスタンの火種がこのまま燻り続けるかどうかの方が、長い目で見た問いになってくる。